こんにちは!コモ子@やまたび北海道(@ComocoHk)です。
今日の話題は十勝連峰の名山「オプタテシケ山」。
オプタテシケ山は十勝連峰の北端にある山で、北海道にある夏山の難易度としては、かなり困難な山の1つです。何が困難かと言うと、その行動時間でしょうか。通常は山中で1泊して山頂を目指すのが一般的です。
ただ、宿泊に利用する美瑛岳避難小屋はキャパシティが狭いうえ、し尿による環境汚染が問題になっているのも事実。重たい荷物を担いで登るのも辛いですからね。日頃から体力をつけ、出来れば日帰りを目指したいところ。
オプタテシケ山登山の概要
トムラウシ山から見たオプタテシケ山
ニペソツ山前天狗から見たオプタテシケ山
オプタテシケ山は十勝岳に比べると知名度が劣りますが、表大雪のトムラウシ山や東大雪のニペソツ山から見た姿が美しくて印象的です。
●トムラウシ山から見たオプタテシケ山(2017年6月)
【トムラウシ山|日本百名山】天人峡温泉から日帰りできるか?このコースをおススメする理由
●ニペソツ山から見たオプタテシケ山(2014年10月)
【ニペソツ山|日本二百名山】白いニペソツに会うためには?10月初旬、旭岳の初冠雪の時期を目がけて登ろう!
夏のオプタテシケ山へ登るには、白金温泉から登るのが一般的で最短のコース。
トムラウシ山から縦走することもできますが、この縦走路を歩く人はごく限られています。
そんなオプタテシケ山に7月下旬、白金温泉から日帰りしてみましたので共有します。
なお、オプタテシケ山に関する詳しい情報は、北海道夏山ガイド③「東・北大雪、十勝連峰の山々」、新版・日本三百名山登山ガイド(上)北海道・東北・関東でも紹介されていますので、ぜひ併せてご覧ください。
また、登山口へ通じる涸沢林道に関する最新情報は、北海道森林管理局のウェブサイト「登山等に関する通行規制等について」内の上川中部森林管理署管内の情報をご確認ください。
なお、涸沢林道のゲートを開放するためには、鍵ナンバーの照会が事前に必要です。
遥かなる日本三百名山、オプタテシケ山を目指して
さてここからは、実際に歩いてみた様子をもとにお伝えします。これまで3回ほど登ってみましたが、このコースを歩いたのは2012年7月31日です。
日帰りを目指すなら、まだ暗いうちに出発しよう
白金温泉からオプタテシケ山へのコースタイムは登り6時間、下り4時間30分くらいは見ておきたいところ。
このコースが下りにも時間を要するのは、稜線上で登り返しがあるから。美瑛富士避難小屋からオプタテシケ山の区間、特に復路のベベツ岳の登りはかなりの標高差があります。
さて、この山を日帰りする場合の計画について。
行動時間が長いので明るい時間が長い6月下旬といきたいところですが、十勝連峰は7月上旬くらいでもまだ雪が残る箇所があります。
そのため、昼の時間がちょっと短くなるものの、7月中旬以降を狙います。この時期は花も多くて楽しいんです。
とは言え、日の出の時間を過ぎてからの行動開始ではちょっと遅いので、午前3時くらいからの出発を目指したいところ。
- 白金温泉に宿泊する
- 国設白金野営場でテント泊をする
- 車中泊
選択肢はいろいろありますので、前夜は早めに就寝して早朝に出発しましょう。
なお、涸沢林道のゲートを開放せず、徒歩で登山口へ向かうことも可能。ゲートから登山口までは2km程度。全線舗装もされているので、30分くらいで到着できます。
体を温めるためのウォーミングアップに最適です。
美瑛富士避難小屋を目指して。稜線が近づいて夜が明ける
取材日は7月31日。北国の北海道でも短い真夏にあたります。そのため、早朝でもかなり暖かく、行動開始から半袖でも大丈夫。
ただ、真夏の早朝にヘッドライトを点けて登るとデメリットも。
- 虫がたくさん寄ってきたり、
- 朝露で全身がずぶ濡れになったり、
- 虫が吐く糸が顔に付いたり、
- エゾシカと目が合ったり、
- 鳥が突然飛び出して心臓が止まりそうになったり、、、
こういう不快な思いをしがちです。
さらにこのコース特有のデメリットも。
- 大きな岩と灌木のミックスが多くて歩きずらい
- トラバース気味で水はけが悪いためか、足元が泥だらけ
という点も見逃せません。
それでも標高を稼ぐにつれて、大雪山系らしい爽やかさが増してきます。先ほどのマイナス点を一気に忘れさせてくれるでしょう。
石垣山が見えてくると、美瑛富士避難小屋は近い
コース上には天然公園というポイントがあり、ここを過ぎて稜線が近くなってくると、美瑛富士避難小屋までもうすぐの距離です。
周囲の景色はすっかり変わり、高山帯特有の風景が広がります。
オプタテシケ山の登山口は、十勝連峰の西側にある登山口のなかでは最も標高が低いので(約820m)、ここまででもすでに長かったという実感がわいてくるはず。
でもね、早朝に出発するとまだ午前中の早い時間なので「まだまだイケる」って力が湧いてくるから不思議。これが午後だと「さ、ビール飲んで早めに寝るか~」ってなっちゃうんですよね。
さて、天然公園を過ぎると一帯は巨岩が点在しているんですが、お花畑もあちこちに。
十勝連峰は上ホロカメットク山から十勝岳、さらに美瑛富士の間が荒涼とした寒々しい景観ですが、この付近からオプタテシケ山への稜線はお花畑が楽しめます。
美瑛富士避難小屋からの稜線歩き。憧れのオプタテシケ山へ
今回は登山口から約3時間、午前6時に美瑛富士避難小屋に到着。
ここの避難小屋にはトイレがないので十分配慮したいところ。雪渓が残るうちは水場として利用されています。
例年、地元の有志で周辺の清掃作業が行われているとのこと。一人一人の心がけによって、そういった活動をしなくても良い状態を築きたいものです。
さて美瑛富士避難小屋からは、いよいよ稜線歩きの始まり。
まずは石垣山。その名の通り大きな岩が積み重なった小ピーク。ここから次のベベツ岳へと続きます。
注意点はガスによる視界不良でしょうか。岩の上を歩くので、マーキングを見失うとコースをロストする可能性があります。
縦走路は、石垣山の山頂を踏まずにベベツ岳へと続いています。
石垣山を過ぎると緑が多くて歩きやすい稜線となり、ベベツ岳へと続きます。
少々の登り返しがありますが、周囲にはお花畑も点在していて走れるくらいの快適な道。
ベベツ岳は石垣山から見るとピークというような感じがしませんが、オプタテシケ山方向から見ると、稜線上の著名なピークだと分かります。
ベベツ岳の山頂は縦走路から少しだけ離れたところにあり、そのまま見落として通過してしまいそうですが、小さな山頂標識が立てられています。
さて、ここからがオプタテシケ山への核心部。
標高差で130mを下り、さらに280m登り返すという難所です。ガスがかかっていてオプタテシケ山の山頂が見えなければある意味でラッキーかも。絶望感を感じることなく、一心不乱に進むだけですからね。
ベベツ岳からの下り口には大きなケルンがあり、ちょっとしたランドマークになっています。必要に応じてここに荷物をデポしていくという選択肢も考えていいしょう。
オプタテシケ山から眺める十勝連峰の眺め
ベベツ岳からいったん大きく下り、オプタテシケの山頂を目指します。
多くの人にとってオプタテシケ山への登りよりも、帰りのベベツ岳への登り返しの方が気になるかと思います。
でも、ベベツ岳とオプタテシケ山の鞍部は平坦で、ここにもお花畑が広がっています。ここはきっと気持ちを癒してくれますよ。
鞍部からは最大の難関とも言えるオプタテシケ山への登り。急な岩場をよじ登るような場面もあり、油断はできません。
縦走装備がずっしりと重たい方は十分気を付けて。
登山口から約5時間30分。山頂にはガスがかかっていましたが無人。午前8時頃から30分くらい粘ってみるとしだいにガスが晴れてきました。
こうして真夏でも静かな山旅が楽しめるところは、北海道ならではかもしれませんね。
余裕があれば、美瑛富士山頂にも寄ってみよう
さて、オプタテシケ山の頂に登ったら、通常はそのまま往路を引き返して下山するのが一般的。
でも、オプタテシケ山の登山口は美瑛富士の登山口も兼ねていて、この機会に美瑛富士に登っておかなければもったいないと思いませんか?
十勝連峰の縦走路のなかで美瑛富士だけが未踏、なんていうことにもなりかねません。
実際のところ、美瑛富士と美瑛岳をセットで登ろうとするとかなり大変で、一旦コルまで下りて登り返さないとならないんですよね。
そして、美瑛富士や美瑛岳だけを単独で目指す機会なんてほとんどないもの。十勝岳とセットで美瑛岳に登るのが一般的なので、これに美瑛富士を加えて登ろうとすると大変。
なのでここはちょっと頑張って、美瑛富士にも足を延ばしてみることをおススメします。
難点は、美瑛岳側まで回り込まなければならないこと。この付近は遅くまで雪渓が残るので注意が必要。本当に美瑛富士ってやっかいな存在です。
美瑛富士の山頂は頂上台地のさらに奥まったところにあり、ある意味では十勝連峰の縦走路の中で最も「遥かなる山」かも。
山頂から眺めるオプタテシケ山の姿はピラミダルで魅了されることでしょう。十勝連峰の盟主に相応しいのは十勝岳ではなく、オプタテシケ山だというのが個人的な意見。
下山は再び美瑛富士避難小屋まで戻り、往路を白金温泉へ向けて下ります。
美瑛富士に立ち寄った場合、健脚な方でも11時間くらいを要すことでしょう。
日中の明るい時間が長く、残雪の影響も少ない7月中旬頃がおススメ。日帰りで目指す方、春からしっかりトレーニングを積んで楽しくオプタテシケ山を目指してください。
●快晴の美瑛岳から見たオプタテシケ山(2017年6月)