大夕張コースの登山口へ通じる鹿島支線林道の開通は6月15日から
夕張岳のメインルートとなる大夕張コースの登山道へは、シューパロ湖から市道の橋を渡り、さらにその奥にある未舗装の林道を走らなくてはなりません。
- 市道に関しての詳細は夕張市のホームページ
- 林道に関する詳細は北海道森林管理局のホームページ
この市道と林道の総延長は、林道区間だけでも約10kmと長く、ゲートが解放されるのは例年6月15日頃。
ゲートが閉じられるのは9月30日と決まっており、この時期に登山者が集中します。
そもそも花の名山ですから、これ以外の時期に訪れる登山者は比較的少ないかも。
私は数年前の5月に、シューパロ湖から歩いたり走ったりして登山口まで行き、山頂へ登ってみたことがありますが、一般的には現実的ではありません。
その時の記事はこちら。
【夕張岳|日本二百名山】林道でヒグマ遭遇、マダニに咬まれる|冷や水コースと馬の背コース
この林道、前半が比較的難所が多いんです。
沢沿いの斜面に道が付けられていることから、崖崩れや災害の影響を受けやすく、しばしば通行止めになることがあります。
林道・駐車場・オーバーユースの問題を考えて、週末は避けたい
この山をゆっくりと楽しみたいのなら、できれば平日に訪れたいですよね。
北海道の夏山登山に関して、バイブル的な存在の北海道夏山ガイドシリーズ。
この第5巻「道南・夕張の山々」でも書かれている通り、やっぱり混雑する週末避けたいもの。
環境面や駐車スペースの見地からも配慮が必要だということですね。
それでも週末に登るのであれば、金山コースから登るという選択肢もあるでしょう。
現在、夕張岳には2本のコースがあります。
大夕張コースに比べて金山コースは、
- 道央圏からアクセスが遠くなる
- そもそもコースが長い
- 見どころのお花畑が広がる前岳湿原から吹き通しまでの高層湿原帯を通らない
というデメリットがあります。
でも、単純にピークだけを目指す場合や、吹き通し付近のお花畑だけを楽しめれば十分、というような方には、金山コースも選択肢に入りそうですよね。
冷水コースから夕張岳山頂を目指して
次に大夕張コースについて。
このコースは大きく4つのパートで構成されており、
- 登山口から前岳の基部にある石原平まで
- 前岳の基部をトラバースしながら望岳台を経て前岳湿原まで
- 1400m湿原やガマ岩などを見ながら池塘やお花畑の間の木道を歩き、金山コースと合流する吹き通しまで
- 最後の急登を詰めて山頂へ
ざっくりとこんな感じになります。
このうち最初の登山口から石原平の手前までは2つのコースに分かれており、
- 駐車場から近く、概ね冷水の沢沿いを歩く「冷水コース」
- 林道終点の夕張岳ヒュッテ付近から尾根地形を登る「馬の背コース」
多くの人は冷水コースを利用しているようですが、これには私も賛成。
2019年6月に登った時は、冷水コースから登り、馬の背コースから下山したのですが、馬の背コースはやや荒廃気味。
倒木が登山道を塞ぐ箇所も数か所あり、傾斜の緩急も比較的大きいです。
その点、歩きやくて途中数か所で水の補給もできる冷水コースがおすすめ。
冷水コースにデメリットがあるとすれば、コース上に雪解け水が流れて靴を濡らすところがあるくらい。
早立ちを心がけ、出発は日の出とともに
次に冷水コースの状況です。
2019年6月25日現在、冷水コース、馬の背コースの各登山口には、アナログ式のカウンターが設置されています。
入山時のみ自分でカウンターのボタンを押し、下山時は押さなくてよいとのこと。
なお、駐車スペースがある林道ゲートにも空知森林管理署設置の入林ポストがあります。
ポストの中にある「夕張岳 入林記録簿」に記帳するようにしましょう。
登山届は、別途北海道警察へ届出を忘れずに。
最近はウェブ上からメールフォームで手軽に送信できるので、低山や入山者が多い山であっても、できる限り提出を心がけたいものです。
それと登山は早立ちが基本。
早朝は野生動物と遭遇するリスクが高まりますが、午後からの天候の急変や暑さを避けるために、早朝からの行動をお薦めします。
また、早朝の出発を推奨する他の理由として、駐車スペースが限られるという理由もあります。
それと、雲海が見られる可能性も高まるんですよね。
よく、大雪山系などから雲海に浮かぶ夕張岳と芦別岳の山頂付近が見られますよね。
まさにあの状況です。
登山口を出発する段階では、空が曇っていて心配になるかもしれませんが、天気予報を信じて早めに出発しましょう。
もちろんデメリットだってあります。
草木に付いた夜露によって、全身ずぶ濡れになる可能性があるということ。
これぞまさに「露払い」。
でも、真夏ならそれも案外心地よかったりして。
冷水コースと馬の背コースの合流地点までのコースタイムは1時間50分程度。
普段からトレーニングをしている人なら、1時間程度で登れるでしょう。
序盤のウォーミングアップに最適です。
シラネアオイが群生する石原平で心を癒される
冷水コースと馬の背コースが合流したら、右手に前岳を仰ぎ見ます。
前岳の基部に一部急登があるものの、ここを登りきるとそこは石原平と呼ばれ、シラネアオイの群生地。
シラネアオイは5月頃から咲き始めるお花ですが、この付近は雪が遅くまで残るため、6月下旬でもまだまだ多くの花が咲いています。
ちなみに、みなさん知っていましたか?
シラネアオイって日本国内にしか咲かない固有種なんですって。
シラネアオイに心が癒されつつ、コースはこの付近から緩やかに。
足取りもきっと軽やかになるでしょう。
さらに登山道は、前岳の基部を捲くように続いており、芦別岳へと続く夕張山地を一望する望岳台へ。
ここは広場になっているので休憩ポイント。
この後、一部に急斜面の雪渓が残るので、気を引き締めて慎重に通過します。
特に林道ゲートが解放されたばかりの時期は要注意。
また、一部に岩をよじ登るような箇所がありますが、それもほんの少しだけ。
この後、雪渓から冷たい水が流れる憩沢を経て、いよいよ前岳湿原へ。
ここまで来ると周囲に背丈の高い木々はなく、気持ちの良い湿原歩きに変わります。
前岳湿原、ガマ岩、1400m湿原と続く高原ハイキング
さて、ここからが夕張岳のハイライト。
高層湿原帯のお花畑です。
ここまでコースタイムにして3時間程度を歩いてきました。そのご褒美の始まり。
コース上には木道が整備され、両脇に池塘やお花畑に残雪、、、とにかく飽きないんですよ!
この山の一番の魅力は高山植物だと誰もが思われるでしょうが、その種類は600種を超えるそうです。
アズマギクやチングルマなど、定番の植物だけでも十分に楽しめますが、ここはやはり夕張岳の固有種を見つけたいですよね。
ユウバリもしくはユウパリの名を冠する植物だけでも、全部で19種も存在するそうで、その中で最も有名なのはユウバリソウ。
山頂基部の「吹き通し」付近にたくさん咲いていました。
ハイマツ帯の最後の急登、夕張神社からひと登りして夕張岳の山頂へ
吹き通しで足を止めてユウバリソウに癒されたのち、最後に待ち受けるのは、お椀状の山頂へと続くハイマツ帯の急登です。
でも、標高差は僅か120m程度。
もう少しのひと頑張りですからね。
最後の登りはちょっと息を切らして辛いところ。
でも、イワウメなどの小さなお花たちが足元に見えると、ついつい疲れも癒されちゃいますよね。
そうそう、山頂直下にはちょっとした広場があって、ここには夕張岳山頂神社があります。
風が強いときは山頂で休まず、この付近でお昼ご飯を食べるのがいいかも。
さらにハイマツとお花畑がミックスされた岩場を登っていくと、ついに夕張岳の山頂です。
山頂は360度の景色が広がっていて、とても爽快。
まずこちらがここまで歩いてきた全景。
雪はほぼ消滅しているように見えますが、それでも登山道が雪渓に埋まっている箇所も少しだけあります。
前岳が遥か彼方に見えますが、全体的にはなだらかな登山道なので、帰りも楽ですよ。
こちらは稜線上の標高点1602ピーク側。
午前中に登ると順光になって明るく見えますね。
残念ながら芦別岳は雲の中。
北へと続く夕張山地は一部に尖った山々もあり、特徴的な眺めが広がっています。
芦別岳は私も大好きな山。
2018年6月に登った時は、快晴で雲海も眺められ、希少種のツクモグサも見られました。
【芦別岳|新道コース】全周に広がる雲海、残雪と緑と青い空、ツクモグサを楽しみに早朝から山頂を目指そう!
下山と林道の運転は慎重に
帰りは来た道を戻りますよ。
景色が良くてお花も多いので、よそ見をして転ばないように。
また、木道は損傷箇所が多く、濡れていると滑ります。
ザレの斜面より木道の上の方が滑って転ぶ可能性が高いと思いませんか?
下りはスピードも上がるので、ケガをしないように気を付けて。
前岳湿原や石原平を過ぎ、帰りは馬の背コースから下山をしてみました。
最初にお話しした通り、下りも冷水コースの方が歩きやすいと思います。
でも、馬の背コースを下りたところは林道終点になっていて、ここには夕張岳ヒュッテがあります。
夏季は管理人さんが常駐しています。
「お疲れさま~!」と元気に手を振ってくれました。
思わずニッコリしちゃいますよね!
夕張岳についての詳細は、夕張市のウェブサイトにて。
また宿泊予約については、ユウパリコザクラの会のウェブサイトにて。
帰りの林道も運転には気を付けてくださいね。
時間帯によっては対向車が来る可能性があります。
林道の通行はスピードダウンにキープレフト、ライト点灯が基本です。