残雪期のトヨニ岳南峰|豊似川左股中間尾根から主稜線へ

トヨニ岳

 

こんにちは!コモ子@やまたび北海道(@ComocoHk)です。

 

今日の話題はトヨニ岳

 

日高山脈の南側にある、主稜線上のピークです。

 

2020年3月下旬に登ってみましたので、その様子をお伝えします。

 

トヨニ岳について

 

トヨニ岳には登山道がないので、沢もしくは積雪期にしか登られません。

 

もともと一般登山者にとって、ハードルが高い日高山脈なのに、夏道がない。

 

ますます遠ざける要因になってしまいますよね。

 

でもせっかくの機会、概要にだけでも触れてみて、日高山脈の興味を持ってもらえたら嬉しいです。

 

 

日高山脈にはトヨニと名が付く山が2つあって、カタカナでトヨニ岳と書く山と、漢字で豊似岳と書く山の2つがあります。

 

後者の豊似岳はえりも町にある一等三角点がある山で、ハートの形をした豊似湖が近くにあることで有名。

 

カタカナで書くトヨニ岳は、国道236号(通称天馬街道の中央部にある野塚トンネルの近くにあり、日高山脈の主稜線上にあるピーク。

 

豊似岳もカタカナのトヨニ岳にも夏道がなく、雪がある時期に登るのがふつうです。

 

今回ご紹介するトヨニ岳は双耳峰で、地図上のピークは標高1,493mのほうで、南峰と呼れます。

 

北側のピークは標高1,529mの南峰より高く、こちらの通称は北峰

 

北海道の百名山(北海道新聞社)の中で、最難関と言われているピリカヌプリへの玄関口となる存在でもあります。

 

今回登ったルートの概要

 

今回登ったルートは、野塚トンネル十勝側出口にある駐車場を起点に、裏手を流れる川を渡って沢地形を登り、途中から尾根に取り付いて稜線上まで出るルート。

 

主稜線と合流するこの尾根は、新版 北海道の山と谷2のなかで、豊似川左股中間尾根と呼ばれています。

 

主稜線まで登ると、小さなアップダウンを繰り返しながら、少しずつ高度を稼いで山頂へ。

 

尾根上の一部には平坦なところもありますが、やせ細った岩稜地帯も多く、恐怖を感じることも。

 

その他にも、495二股・773・1253を経て登るルートもあり、こちらは南東尾根と呼ばれています。

  

野塚トンネル十勝側出口駐車場からスタート

清田

 

日高道が厚賀ICまで延伸しているおかげで、今では札幌市内から3時間程度の時間で、現地へ行けるようになりました。

 

道央道の有料区間を使わなくても、4時間程度。

 

この日は土曜の退勤後、20時半から23時過ぎまで仮眠をとり、札幌市内を24時頃出発。

 

以前は現地で車中泊をすることが多かったのですが、最近は自宅で仮眠を取ってから出発するパターンが多いです。

 

野塚トンネル十勝側駐車帯

 

3月29日の早朝4時半頃は、まだ2台しかなかったクルマも、 私が下山した午前10時過ぎ頃には、かなりの台数で賑わっていました。

 

ここ、野塚トンネルの十勝側駐車場は、野塚岳へ登る場合にも多く利用されます。

 

週末は混雑しますが、それでもざっと見積もって30台くらいはいけるでしょう。

 

 

野塚トンネル

 

駐車場の裏手を流れる川には、スノーブリッジが残ります。

 

そもそも川幅が狭いため、雪が無くても飛び石で渡渉が可能。

 

 

豊似川左股川上流

 

私が登り始めた早朝4時半頃でも、特に問題なく渡渉できました。

 

 

沢

 

すぐに尾根へ取り付きたいところですが、すでに地肌が露出しているので、しばらくは沢を登ることに。

 

正面に見える沢地形には多くの雪が残り、アイゼンを付けてガシガシ登っていきます。

 

今回はスノーシューを持って行ったものの、最後まで担いだまま。

 

もう少し雪がある時期であれば、北勝橋付近から尾根を登ったほうがいいのかも。

 

野塚トンネル

 

沢地形からかなり高度を上げてみたものの、取り付く斜面の大部分はブッシュが露出している状況。

 

ここからさらに枝沢を進んで、適当なところで尾根に登ろうと思います。

 

豊似川左股中間尾根

 

枝沢の下には、勢いよく水が流れる音が聞こえ、ぽっかりと空いている所や、一直線にクラックが入っている箇所も。

 

水が流れるところには、雪も流れる可能性があるわけで、早々に右側の斜面から尾根に登ります。

 

画像は下山時のものですが、登っているときは早朝なので、雪が固く締まって登りやすい時間帯。

 

尾根

 

尾根に取り付いて、急な登りを我慢したあとは、標高870mくらいで中間尾根と合流します。

 

少々余談になりますが、北海道の山と谷が初めて刊行された昭和52年当時は、国道が全線開通されていなかったので、広尾側からのアプローチが基本だったみたい。

 

再刊委員会により平成11年にリニューアルされた北海道の山と谷(下)では、すでに国道が全線開通されていたものの、基本的に昭和52年当時とあまり変わらない内容。

 

しかし、平成30年に刊行された新版 北海道の山と谷(2)では、基本的に野塚トンネル北側の駐車場を起点として登ることが想定されていて、以前のように・495上二股・762ジャンクションピーク中間尾根主稜線より、さらに短縮されたルートが描かれています。

 

天馬街道が全線開通した当時から、トンネル北側の駐車場があったかどうかは分かりませんが、いずれにせよ道路が開通することで、昔よりアクセスが楽になったのは確か。

 

 

豊似川左股中間尾根

 

中間尾根は地図を見ても分かるように、全体的に傾斜が緩やかな印象。

 

木々の合間からは、トヨニ岳の南東尾根と、南峰の東にある1460ポコ東峰)が最も高く見え、南東面直登沢には雪がビッシリ詰まった状態で南峰へと突き上げているのが確認できます。

 

中間尾根から主稜線に飛び出して

トヨニ岳

 

今回、主稜線へ出るまでにかかった時間は1時間半ほど。

 

残雪期の早朝と言うこともあって雪が固く締まっており、アイゼンがよく効きました。

 

ここから南峰までは小さな登りが幾度となく続き、やせ細った区間もあるのでかなり慎重になります。

 

 

気象庁天気図

気象庁のホームページより引用

 

この日は、西から高気圧がゆっくりと近づいており、風もなくとっても穏やか。

 

空高くに雲が広がっていて、ほとんど青空は見えませんが、山歩きには最適。

 

トヨニ岳1251峰

 

主稜線上の1251峰の手前から、すでに地肌が露出しており、1251峰からいったん下ったところにある岩稜帯は、完全に地面が露出しています。

 

そもそもこの付近には、あまり雪が付かないのだそう。

 

1251峰で進路を北に変え、岩稜帯を慎重に通過すると、次はいよいよ南峰手前のニセピークへと続く急な登りと、上部にはやせ細った箇所もある核心部。

 

トヨニ岳主稜線

 

懸案の上部のやせ尾根には雪庇が無くてほっとしましたが、危ない箇所なので、一歩一歩慎重に通過。

 

帰りもここを通るのかと思うと、やや憂鬱になります。

 

私、かなりの高所恐怖症。

 

トヨニ岳

 

振り返ると、楽古岳へと続く主稜線。

 

こうして見渡すと、トヨニ岳から楽古岳までの縦走が楽しそうで、一日でも早くやってみたくなります。

 

やりたいと思った時が旬なので、休日と天候が合致すれば、すぐにでもやろう。

 

いきなりピリカヌプリへと続く景色が飛び込んできて、気持ちが高揚せずにいられるものか!

トヨニ岳

 

南峰の南にある肩(ニセピーク)へ上がると、北側の展望が一気に開けます。

 

雪も一気に増えた感じ。

 

遥か彼方には、北海道の一般登山者なら誰もが憧れるピリカヌプリも。

 

ピリカヌプリ

 

ピリカヌプリと主稜線上の1512峰の間には、1839峰の尖った姿が少しだけ見えています。

 

神威岳の遥か彼方には、イドンナップ岳周辺の連なり。

 

その手前右に見える峰々に確信は持てないものの、1839峰の南西にある1742峰シビチャリ山周辺ではないかと推測。

 

神威岳

 

神威岳は本当に美しく魅力的。

 

惚れ込んで過去2回ほど通ってみたのだけど、会うことすらままならなかった私。

 

今回も遠くから眺めるだけ。

 

エサオマントッタベツ岳

 

北峰とピリカヌプリの中間を見通した先には、エサオマントッタベツ岳JPから札内岳へと続く稜線の姿も。

 

南峰まで登ると、十勝幌尻岳も見えます。

 

トヨニ岳ニセピークからの眺め

 

ニセピークから振り返って、南側の峰々の連なりにひとり酔いしれます。

 

 

 

 

野塚岳には2015年1月に登ったけれど、あいにくガスの中。

 

楽古岳は2014年10月の紅葉最盛期に登ったけれど、それっきりのご無沙汰です。

 

私にとってそれ以外は未踏峰ばかり。

 

生まれ育った北海道には、行ったことがない場所が文字通り山ほどある。

 

東峰

 

ニセピークから10分くらい歩くと、トヨニ岳南峰に到着。

 

もちろん、標識の類は何もありません。

 

ただそこにいるだけで満足以外の何ものでもない。

 

前出の通り、南峰から1460ポコへの吊り尾根を歩き、南東尾根を下る周回ルートもありますが、・495二股の南側のへつりがイヤなので、今回は来た道を戻ることに。

 

画像の左側の斜面はトヨニ岳カール、通称ペンギンカールと呼ばれるところ。

 

トヨニ岳

 

かくして、日高山脈にはいつ来ても魅了され続ける私。

 

雪を抱く山々の景色は、やはりここに集まっているように思うのです。

 

生きている間、あと何度この山々を見られるだろうか、次の山行に思いを馳せながら、山を下りるのでした。