こんにちは!コモ子@やまたび北海道(@ComocoHk)です。
今日の話題は、増毛山地の群別岳と奥徳富岳について。
2020年4月17日の山行の様子を中心にお伝えします。
ダイジェストはヤマレコにアップした記事にて。
群別岳と奥徳富岳の概要
増毛山地で有名なのは、やはり暑寒別岳ですよね。
日本二百名山ということもあり、田中陽希さんの「グレートトラバース2 日本二百名山ひと筆書き」でさらに有名になりました。
増毛山地ではその他にも、雨竜沼湿原と南暑寒岳あたりも登山者が目立ちます。
いっぽう今日お話する群別岳は、増毛山地の中ではひと際目立つ鋭鋒で、全国区ではないけれど地元ではかなりメジャー。
暑寒別岳の山頂から、隣りの奥徳富岳と並んだ姿が印象的で、北海道の岳人にはとても人気があります。
ただし、この山には夏の登山道は無く、沢からアプローチするか、雪のシーズンに登るかどちらかの選択肢に絞られてしまうので、訪れる人は少ないのが事実。
2つの山は吊り尾根で結ばれて距離も短く、1時間~2時間くらいの所要時間でもう一方の山頂を踏むことができます。
群別岳の南尾根(群別川左股ルート)と奥徳富岳の南西尾根を使えば、周回登山も可能。
林道の奥まで入れる残雪期であれば、スキーを使わなくても十分日帰りできます。
コースの概要は「新版 北海道の山と谷3」で紹介されていますので、ぜひこちらもご覧ください。
札幌を深夜に出発し、登山開始地点の群別川沿いの林道へ
さて、前置きはこのくらいにして、ここからは今日の山行記録。
つい5日前に登った群別岳南西尾根上の△1222.1(通称:幌天狗)のときと同じく、24時に札幌の自宅を出発し、創成川通りを石狩方面へ向かいます。
幌天狗のブログはこちら ⇨ 幌天狗から眺める群別岳|4月中旬の雪山登山
なおこの経路上で、深夜の時間帯に営業している最終コンビニは、石狩新港のセブンイレブン。
買い物は早めに済ませておいた方が無難かも。
浜益斎場への案内標識から林道へ入る
石狩市浜益区の市街地を通り抜けて、国道が海岸線から少し離れた辺りに、群別川にかかる橋があります。
橋を渡ったところに、浜益斎場と書かれた案内標識がありますので、そこで右折。
右手に墓地、左手に斎場があるあたりで舗装道路が途切れ、その後は未舗装の林道となります。
深夜の林道は、エゾシカの飛び出しが多いので、時速20kmくらいのスピードで慎重に。
いつものニコニコレンタカー(N-BOX)なので、車高にもちょっと気を遣って。
国道から約4km地点にあるT字路には、通行止の看板が立っていました。
この先に石狩森林管理署のゲートがあり、ゲートが開いていれば、この先さらに3kmくらい奥まで入ることができます。
今回は、この奥にある群別川に架かる橋を過ぎ、二叉路となる地点まで雪が解けており、ここには2台のクルマが停まっていました。
雪が解けていても、この先で林道が崩れ落ちている箇所があり(この記事の最後に紹介)、十分な駐車スペースもありません。
深夜3時前に群別川沿いの林道を行く
5日前の幌天狗に続いて、今回も現地到着は午前2時30分くらい。
車内で準備をして、ヘッドライトを点けて林道を歩き始めます。
この時期は虫がいない点はいいのですが、ヒグマに遭遇しないように、クマ除けの鈴を付け、何度か笛を鳴らしておきました。
私が好きなのは真鍮の音色で、初代も現在使っている2代目も秀岳荘で購入したもの。
最近、もっと大きな音がするタイプが欲しくて、Amazonで探してみると、
Nagi・Sound 真鍮 鐘 ベル キーホルダー カウベル 首輪 クリスマス 飾り オーナメント (大)
という商品が見た目が近い感じがしますが、実際に購入してみないとちょっと分かりません。
ベルの音色が川音でかき消されないように、訳の分からない独り言を言ってみたり、歌を唄ってみたりしながら歩きます。
何の唄かって?
「歩兵の本領」
想像してみて欲しいのですが、真っ暗な林道を中年男がひとり「万朶の桜か襟の色 花は吉野に嵐吹く 大和男子と生まれなば 散兵綫の花と散れ」と歌って歩いていたら、そりゃあクマだって近寄ってこないですよね(汗)
林道歩きが思っていたより捗らなく、林道の終点まで約45分もかかり、いよいよ沢沿いの作業道跡へ入っていきます。
3年前も登っているので、この時間帯でも記憶を頼りに何とか歩けますが、記憶よりもGPSの貢献度のほうが高いでしょう。
林道や明瞭な尾根地形なら、ナビゲーションがなくても問題なく進めるでしょうが、それ以外の場所で深夜に間違いなく歩ける自信は正直言ってないです。
図上で方角や距離を算出しておき、コンパスと歩測で歩くなんて、とてもじゃないけど非効率。
作業道跡から広い尾根、さらに進路を北へ
渡渉点を過ぎると、対岸にも作業道跡が続いていて、そこを登っていきます。
渡渉点の上部には、かろうじてスノーブリッジが残っていますが、スキーを履いていなければ普通に飛び石で渡った方が安全かも。
作業道跡は2万5千図には載っていないのですが、尾根の途中まで続いているので、それを利用します。
道が左に折れる2回目の屈曲箇所から、ちょっと進んだところで広い尾根に取り付き、まずは標高点・609を目指します。
この付近で薄明となって、少しずつ明るくなってきました。
4時前から徐々に空が青くなっていき、宇宙との一体感を感じます。
標高点・609から進行方向を変え、ここから小さな起伏が点在する地形を越えていきます。
スノーブリッジを何度か渡りながら、標高点・1069から西に派生する尾根を目指して、北へ進路を取ります。
西尾根の南側にある沢地形は、広くて傾斜が緩やかなので登りやすいです。
でも尾根に取り付くのが遅れると、雪庇に阻まれて尾根に上がるのが困難。
今回は標高940mくらいまで詰めて尾根に乗り上げたのですが、アイゼンの前爪を利かせて強引に雪庇の壁をよじ登った感じ。
標高700mくらいで尾根に乗った方が楽かもしれません。
・1069の西尾根からは群別岳とその南峰、南西尾根の幌天狗までを一望でき、朝日を浴びる山頂が輝いて見えます。
この時間帯に奥徳富岳へ登ろうとしたのは、群別岳を順光で見られるから。
奥徳富岳の南尾根から群別岳を見たらさぞかしステキだろうなぁ、と思ったのです。
やはり予感は的中。
そして振り返ると浜益の名峰のひとつ、黄金山や海岸線の景色も。
石狩湾の朝、という感じですね。
南西尾根から奥徳富岳山頂へ
西尾根を・1069まで登るとさらに視界が開け、目指している奥徳富岳の山頂と、そこへと続く広い稜線が見通せます。
ここは風が無ければ絶好の休憩ポイント。
ここから山頂までの直線距離は、わずか1.5kmに満たないのですが、標高差は300m程度あり、結局1時間ほど費やすことに。
同じく増毛山地の知来岳やピンネシリはもちろん、遠く夕張山地の山々まで見えてしまうところが早朝ならでは。
東側は急斜面なので、開放感があって気持ちがいいですよ。
ラッセルを強いられそうな時期なら、ここまで登るだけでも十分満足できそう。
途中の標高点・1214を左手に見ながら進み、今度は最短距離で山頂を目指そうと、尾根の西側をトラバースしながら詰めていきます。
心臓の鼓動が大きくなりながら、5m、10mと距離を縮めていくところに登山の魅力が詰まっていると思うのです。
尾根に上がると東側に雪庇があり、視界には南暑寒岳が飛び込んできます。
もう間もなく奥徳富岳のピークという場面。
奥徳富岳から群別岳へ
そしていよいよ山頂へ。
まずは群別岳へと続く稜線。
山頂は北側が急峻なので、・1069辺りから見る姿より尖って見えます。
あそこへ登るのかと考えると、ちょっと怖気ずく私、、、
山塊のスケールを感じられるのは、やはり暑寒別岳方向の眺めでしょうか。
3週間前に登った南日高のトヨニ岳周辺よりなだらかだけど、ちょっと複雑な地形。
トヨニ岳のブログはこちら ⇨ 残雪期のトヨニ岳南峰|豊似川左股中間尾根から主稜線へ
冷たい風が強くて日差しも強いので、モンベルのバラクラバを被り、風対策と日焼け対策をして前進開始。
ここからの稜線は北側が急峻で雪庇もあるので、灌木を縫うようにして安全に進みます。
ちなみにモンベルのバラクラバは、軽くて小さいので丸めてポケットに入るし、まくり上げればビーニーの代わりとしても使えるので、秋から春までかなり出番が多いですね。
実は夏も持ち歩いていたりして。
コスパ重視の私にとっては逸品♪
コルまで標高差200mを下り、今度は200m登る
コルまでの標高差はおよそ200m。
途中に何か所か急な下りもあるので、慎重に通過します。
コルから次の傾斜変換ポイントまで、一気に標高差100mを登るので、ここで一息ついてから挑みたいところ。
登り切ったところの手前はかなり急なので、滑り落ちないようにアイゼンを利かせつつ一気に乗り上げます。
高所恐怖症の私なので、途中で後ろは振り返らないようにして。
ここから50m緩やかに登ったところが、暑寒別岳へと続く稜線の始まり。
そしてここが石狩支庁、空知支庁、留萌支庁の3支庁を隔てる境になっているんですよね。
富山県、長野県、岐阜県の境にある三俣蓮華岳に比べたら、遥かにマイナーな場所ですが、北海道民にしてみれば感慨深い場所。
調べてみると、北海道には3支庁の境界となるポイントが全部で13ヶ所あるようで、三国山や裏摩周展望台などメジャーな場所はどちらかと言えば少数派で、それ以外は根北峠がやや外れたポイントだったり、シアッシリ山や△997といったマイナーなところ、地図上には何の表記もない場所だったりします。
かなりオタな話でしたが、きっと詳しい方がいらっしゃるかと思います。
そこから最後の50mは一気に高度を稼いで、いよいよ群別岳の山頂へ。
かなり体力を消耗したでしょうか、あるいは加齢で体力が衰えているためでしょうか、奥徳富岳から1時間30分ほどかかって到着。
そんな群別岳山頂は、北海道内では屈指の眺め。
全周に著名な山頂が見える場所なんて、そう滅多にないもの。
群別岳山頂から全周の眺め
まずは、今までもずっと見えていたけれど、暑寒別岳。
眼下に延びていく稜線に、人生のなるべく早い時期にあそこを歩こうと決意します。
「山は1年でも早く登ったほうが良い」と言われているように、年齢と体力は反比例ですからね。
進行方向の先にはやせ尾根が続いており、その向こうにには浜益岳へと尾根が続いています。
こっち側の稜線は、ちょっと歩き通す自信がありません。
それは技術的な問題よりも、むしろ高所恐怖症というメンタル上の問題でして、、、
ちなみにさらに奥に見えているのは雄冬山。
浜益岳、雄冬山、浜益御殿は2017年の4月に登ってみました。
その時のブログはこちら ⇨ 【浜益御殿・浜益岳・雄冬山】残雪期のスノーシュー日帰り雪山ハイク
振り返ると奥徳富岳から歩いてきた稜線。
稜線上には、ツボ足で歩いてきた私の足跡が残っていて、一歩一歩の小さな積み重ねが大きな事を成し遂げるという人生の基本を実感。
軌跡を振り返ることで、そのように感じ取れる感性が大切だと思います。
そして、下山時に使う南峰へと続く稜線と、5日前に登った幌天狗と群別岳の南西尾根。
群別岳の山頂からの景色で、もっとも好きなのはこちら側の眺め。
石狩湾を挟んだ彼方には、100km離れた積丹半島の山々と、110km離れた羊蹄山、それとニセコアンヌプリから続くニセコ連山の山並みも。
今日は本当にいい景色。
眠い目をこすりながら23時30分に起床し、ヒグマに怯えながら早朝から登り始めてきて本当に良かったと思います。
群別岳山頂から3時間で下山完了
一連の景色に30分ほど一人で孤独な世界に浸ります。
孤独って孤独死という言葉が象徴しているように、どうしてもネガティブな印象がありますが、私はこうして孤独になれる山が好き。
孤独=寂しいではないと思うんですよ。
時刻は9時を過ぎ、気温も上がってきたので下山開始。
今回はワカンもスノーシューも持っていないので、雪が腐り始めてズボズボ埋まるのは避けられないでしょう。
まずは南峰手前のコルまで下ります。
南峰の東側斜面を慎重にトラバースしながら、標高1200mにある広場まで下ります。
コルから僅かに60mくらいの標高差ですが、なかなか高度を下げにくく、途中で2回くらいジグを切りながら慎重に通過。
雪が腐っているので、アイゼンがしっかりと効いている実感があまりなく、とにかく慎重に。
スキーなら斜滑降で一気に通過できるところですが、スノーシューやツボ足ではちょっと緊張する場面。
広場まで下りたら、暑さ対策でウェアを脱ぎ、十分な日焼け対策を。
ドウランを塗るかのように、顔、首、耳の裏、手首まで3度くらい塗り、リップクリームも唇周辺まで何度も重ねます。
2017年4月に浜益岳に登った時、顔が真っ黒になり、1週間くらい顔の皮膚がボロボロになった教訓です。
南峰から標高点・1079手前のコルの間で、ソロの方とスライド。
コロナウィルス対策で、ソーシャルディスタンスが呼びかけられているなか、すれ違う時も自然と距離が開いてしまい軽く挨拶だけ。
今日初めての人間との接触。
さらに途中で一組のパーティとスライド。
スノーブリッジが無いという情報を聞いて、群別岳から奥徳富岳をピストンする計画なのだそう。
私から「スノーブリッジが残っているので周回登山ができますよ」と伝えると、周回ルートに計画変更されるようでした。
日差しが強くて、腐れ雪に重たい足を引きずってダラダラ歩き、なんとか・609へ戻ったのが10時45分頃。
この付近からの群別岳の姿は本当に立派!
その後も惰性で歩き続け、出発からおよそ9時間後の12時にスタート地点へ戻りました。
まとめると、今回の歩行時間は概ね次の通り。
- スタート地点 ⇨ 奥徳富岳(4時間)
- 奥徳富岳 ⇨ 群別岳(1時間30分)
- 群別岳 ⇨ スタート地点(3時間)
ちなみに林道の途中で大きく崩れ落ちた箇所があるのですが、2017年に訪れたときよりも損傷が大きくなっています。
下の画像でご確認ください。
2017年5月時点での林道の状態
こちらは2017年5月当時の状況。
まだ、人が通行できるくらいのスペースがありました。
2020年4月時点での林道の状態
今回の状況はこんな感じで、以前より傷口が広がっています。
手前に大きな水たまりが出来ているため、水の通り道となっており、倒木も発生してさらに崩れる可能性があります。