さて、昨日公開したブログに続いて、今日はオプタテシケ山からトムラウシ山への場面。
⇨昨日のブログ(前編)はこちら
オプタテシケ山からトムラウシ山までの区間距離は、およそ14.2kmあり、ヤマレコの山行計画機能で見積もるコースタイムは8時間14分、ヤマプラ(山と高原地図)で見積もるコースタイムは11時間40分、北海道夏山ガイド③に記載されているコースタイム合計は8時間20分(注:僕が持っているのは第2版で、現在発売されているものは第3版)。
僕が実際にかかった時間は8時間20分でしたので、ほぼヤマレコのコースタイム通りだったということになります。
オプタテシケ山から双子池へ下る
オプタテシケ山を振り返って。3つのコブで構成されていて、中央の最も高い場所がピーク
十勝連峰の眺めに別れを告げ、5時40分にオプタテシケ山を出発。
ここから先は歩く人が少ないうえにエスケープルートがなく、道も荒れ気味で起伏も多いルート。
体力があればスピードで勝負もできますが、そうでなければ装備と時間でカバーして踏破しなければなりません。
もちろん、まずは安全が最優先。
オプタテシケ山上部の岩稜帯はやや緊張する箇所もありますが、お花の種類も多くて心が癒されます。
一方で双子池まで下ると、三川台まではお花畑が少なく、笹やハイマツの割合がグッと増えていきます。
オプタテシケ山からの下りには雪渓が残り、夏道コースを見失う可能性がある
標高1,950m付近から最低コルまでおよそ550mの下りには、一部に雪渓が残っており、ここでは水が採れます。
僕は今回4リットルの水を担ぎ、ここまでに消費したのが1リットルくらい。
ここで水をがぶ飲みして、満水に補給して出発。
三川台を越えた辺りまでにさらに2リットルを消費し、南沼で満水。
天人峡下山時までに2リットルを消費したので、全部で5.5リットルくらいは飲んだでしょう。
この後の行程では、あちらこちらに雪渓は見えるものの、トムラウシ山の南沼まで水場が無いと考えて良さそうです。
このコース最大の難関は双子池からカブト岩か
双子池からやや離れたコース脇にもテントスペースがある
双子池まで下る途中、ちょうど還暦を過ぎたばかりのハイカーとすれ違い、今日初めての会話をしました。
彼はこの区間を何度も歩いている強者でしたが、直近で歩いたのは5年ほど前とのこと。
- 以前より笹が濃厚で、双子池付近と三川台への登りが特に酷い
- ヒグマとの遭遇確率が高いので、日中以外は歩きたくない(実際に別なハイカーが遭遇したとのこと)
オプタテシケ山から下る途中、双子池には1張のテントが見えたのですが、僕は池そのものを確認することなく、笹藪へ突入。
実際にこの区間が最も笹の被り具合が濃厚だと感じましたが、道はしっかりと確認できるので、ロストする心配はありません。
2週間前に歩いた沼の原からニペノ耳の区間に比べれば笹の高さも低めで、道が見えるだけまだ易しいほう。
ただし、泥だらけであちこちに穴が開いて水たまりも多く、岩や灌木の根もあります。
足元を確認せずに突っ込めば早いでしょうが、先日のブログで書いた通り、高齢になるほど転倒時の骨折リスクが高まることが指摘されており、ゆっくりと慎重に通過。
とは言え、双子池から・1569(通称「カブト岩」)までの距離は1.5kmほどしかなく、標高差も150mくらい。
例え笹が濃くても、登りなので足元の確認が容易なので、十勝連峰方面への縦走に比べれば楽でしょう。
カブト岩付近の台上には笹はほとんどなく、ハイマツか刈り分けられたスッキリとした登山道。
振り返るオプタテシケ山の姿が本当に素晴らしいですね。
続いてコスマヌプリへ
・1668(通称「美真岳」と言うらしい)の下りから見る次のコスマヌプリ。実際には1kmに満たない距離
カブト岩を過ぎると次の著名なポコは・1668。
ここにも1張り分のテントスペースがあり、次のコスマヌプリまでとのコルにも1張り分のスペースがあります。
こんな感じで、縦走路上には緊急避難的なビバーグ適地が点在しています。
トムラウシ山の南沼、双子池、そして美瑛富士避難小屋といったキャンプ指定地は、1か所を飛ばしてその次まで行こうとすると、結構遠いもの。
天候が急変した場合や、体力的にまずいと感じた場合など、次のキャンプ指定地まで行けそうにないときには、無理せずビバーグ適地で休んだ方が無難だと思います。
コスマヌプリへの登り。
こういった小さなアップダウンは、実際の体力的なダメージよりも、精神的な負担の方が大きい感じがします。
それを解消するコツは、普段から山に慣れ親しんで、実際の高低差や距離が真実として、目測によるイメージとを一致させるようにすることでしょうか。
伝わります?この感覚?
コスマヌプリは、地理院地図にもその名が記載されていますが、縦走路はピークを踏むことなく北側を通過します。
ここからの眺めはなかなかいい感じで、次のポコがある・1591とトムラウシ山へと続く山並みにちょっと感動。
オプタテシケ山からここまでの距離は4.7km。
まだまだ半分も来ていません。
ツリガネ山を越えて再び笹薮、そして三川台へ
・1591はかなり急峻に見えるのですが、実際には東側の山腹をトラバースするように登山道が付けられているので安全。
しかもお花畑が広がっていて、ちょっとヒグマ出没の雰囲気を漂わせています。
いったんここから70m以上高度を下げ、今度はツリガネ山の長い登り基調が続きます。
遠くにニペソツ山の姿も。
次の・1553には、ボサの中にひっそりと標柱があり、ここを越えると登山道の崩落箇所が。
新しく踏み跡が出来ていて、さらにテントスペースもありました。
ここまでしばらく独りぼっちでしたが、ツリガネ山を登っている方を発見。
ツリガネ山も、ピークがある1708も通過せずに縦走路が続いています。
ツリガネ山ではソロの方に追いつき、さらにその先では2名の男女にも追いつきました。
しかし、みなさんなぜか無口。
はじめ、ソーシャルディスタンスを意識しているのかと思いましたが、とても気温が上がって暑かったので、あれだけの縦走装備を背負って疲弊していたのかもしれません。
女性の方は、疲労困憊といった表情でした。
気持ちは分かります、、、
さて、ツリガネ山からは安全のために鎖が付けられた箇所があり、一気に下り基調へ。
最低コルがある・1507まで標高差150mくらいを下げていきます。
ここからが再び難関。
下りは灌木やハイマツのミックス、登りに差し掛かると再び笹の斜面が続いていきます。
やや急な登りを過ぎて標高1650mまで上げると、笹をかき分けながらしばらく緩斜面を進み、お花畑が現れる頃には三川台まではもう少し。
ちなみに、ツリガネ山と三川台との間には、2か所ほどテントスペースがありました。
三川台からは快適なお花畑が続くが、まだまだ長丁場が続く
三川台の台上へ上がると、周囲は笹野原とお花畑。
僕は初めてここへ来たのですが、大雪山にこんな素晴らしい場所があったんだと感動しました。
トムラウシ山の懐の大きさは、ここ三川台も含めて考えた方が良さそうですね。
暑さに加えて、睡魔と疲労も重なり、オプタテシケ山からここまで6時間以上かかっていまいました。
しかし、トムラウシ山までまだ4.1km。
白金温泉からトムラウシ山を1日で往復したいだの、白金温泉から10時間でトムラウシ山まで行くだのって、いったいどの口が言っていたんだ!とついつい自責の念。
完全に打ちのめされた敗残兵状態。
お昼になってやや雲がかかり始めたものの、三川台から眼下に広がる池塘群はなかなかの眺め。
何となく七ツ沼カールを思い出し、久しぶりに幌尻岳に行きたくなってきました。
いいかげん、チングルマにも飽き飽きしかけていたものの、これほどまでに数が多いと圧巻です。
遅くまで雪が残るためか、この付近はまだまだ全盛期。
平坦地形が意外と長く感じ、南沼への登りにやっと差し掛かると、眼下には大きな沼と遠くに十勝連峰の眺めが。
ずいぶん遠くから歩いてきたんだなぁと、感動します。
結局、オプタテシケ山からの縦走路で会った人は僅か4人でした。
天空の楽園、南沼キャンプ指定地とトムラウシ山山頂
13時30分、いよいよ南沼キャンプ指定地に到着。
トムラウシ山には過去に2回登っていますが、どちらも天人峡からのルートなので、ここへ来るのは初めて。
まさに天空の楽園という表現がピッタリ。
大雪山系のキャンプ指定地のなかで好きな場所は、白雲岳とヒサゴ沼。
でも、ここも劣らずステキな場所ですね。
最後は急な岩場で締めくくり。
先ほどまで雲の中だった山頂もすっかり晴れ渡り、青空が出てきました。
山頂はもう間もなく、長かった!
はい、ご苦労さん。
さすがにこの時間の山頂には、誰もいませんね。
美瑛富士登山口を0時30分に出発し、トムラウシ山まで14時間もかかりました。
睡魔と暑さはただの言い訳、完全に実力不足でした。
⇨おまけ編「トムラウシ山から日没後の天人峡へ下山し、自転車で深夜の白金温泉へ向かう旅」