11月9日の早朝に早池峰山に登ろうと試みたのですが、結果として風が強すぎて敗退。
夏は易しい山ですが、この時期になると一変。
林道歩きも含め、行動開始から2時間半と僅かな時間でしたが、学びがいくつかあったので決して無駄な山行ではなかったと振り返ります。
今日の記事ではその辺りにも少し触れつつ、記録を残してみようと思います。
事前の天候予測
最近、山へ出かけるときは、事前の天気予報や天気図についてスクショを取っておき、当日の実際の天気とのレビューをするようにしています。
ちょっと面倒ですが、天気の”勘”を養っておくことも大事だと思うわけです。
てんきとくらすより引用
実のところ、早池峰山について事前情報をほとんど収集しておらず、近隣市町村や登山口・登山コース情報をはじめ、標高すら知らないままで仙台出発の朝を迎えました。
裏を返せば、それだけ甘く見ていたということ。
夏山ならそれでいいのですが、やはり初冬。
場当たり的に何とかなるほど甘い季節ではありません。
ただこうして毎週山に登っていると、季節の移り変わりを感じつつもちょっと鈍感になりがち。
まるでゆでガエル現象です。
”てんきとくらす”の気象情報に掲載されている”宮古市”の天気予報がどれだけ参考になるのかなど知るわけもなく、”晴れが期待できる”と楽観視していました。
てんきとくらすより引用
いっぽうで風の強さが並大抵のレベルでないことも把握しており、山頂付近の灌木やハイマツ帯を抜けた辺りで苦戦することは予め想定していました。
しかしながら、実際の天候は雲の通り道で視界が悪く、晴れ間など全くありません。
そして、早池峰山は岩場が続いて木々が一切ないため、樹林帯を出てまもなくして”立っているのもままならない状況”になったというわけです。
木々が無いという情報は、事前に下調べしておけば分かっていたことなので、準備不足は否めません。
気象庁のウェブサイトより引用
こちらは実際の天気図。
いわゆる冬型の気圧配置で、東北北部から北海道まで平地で初雪が降りました。
雪がちらつく河原の坊を午前4時30分に出発
さて、9日の朝は3時に目が覚め、道の駅はやちねの駐車場を出発しました。
この辺のブログは昨日アップした旅行記にて。
登山口より2km手前にある河原の坊駐車場を出発したのが午前4時30分頃。
小田越登山口までの県道25号線は、すでにうっすらと雪が積もり始めていました。
ちなみに県道25号線のこの区間は冬季通行止めの対象区間。
事前に調べた情報では、11月11日から通行止めになる予定。
なので、今回を逃すと今年はチャンスが無さそうです。
さすがに岳のゲートから歩くとなると、雪がほとんどなくても今回の日程では厳しいでしょう。
小田越登山口に到着したのが午前4時53分。
駐車場からおよそ25分ほどかかりました。
すでに道路上も強風の通り道となっていたため、このままのスタイルで登山道を歩き続けるのは賢明ではないと判断。
登山口の木陰で、持っていた衣類をすべて着用することにしました。
足元からクロカン用のスキーブーツに冬用のスパッツ。
下半身はサポートタイツとジャージ、レインウェアの3枚重ね。
上衣はロングシャツと中厚の防寒シャツ、ダウンウェア、ソフトシェル、バーサライト、一番上にもう1枚レインウェア。
厚手の手袋にゴム手袋で完全防水、目出し帽に厚手のビーニー、それにレインウェアのフードを被り、真冬でもここまで着込まないくらいの装備。
ただしアイゼンを持っていないので(航空機の機内持ち込みができないため)、凍結箇所があれば引き返す予定でスタートします。
登山道にはほとんど雪が無く水も流れているくらいなので、気温はこれ以上下がらないだろうと判断。
最初の樹林帯では風も当たらないので、森林限界までは順調に行けるだろうという見立てです。
今日は出発時刻も遅いので、夜明けまでも間もなく。
先週の登った大朝日岳や先々週に登った燧ヶ岳でも風が強くて雪が舞っていましたので、精神的には余裕があります。
人間は不確実性に対して恐れを抱くと言いますが、山歩きの経験を重ねることでヘンに慣れてしまい、山歩きでは慎重さを欠いてしまうデメリットも。
だから通いなれた山に登るときこそ、いつもより注意を払わないといけないのかもしれませんね。
樹林帯を出ると強風で立っているのもままならない
夜が明けかけて周囲が明るくなったものの、どう見ても雲が低くてものすごい勢いで流れているのが確認できました。
僕にとって誤算だったのは、すぐに樹林帯が終わって岩場が始まったこと。
地形上、西側に大きな岩がある箇所では風除けとなって進めるのですが、そうではない箇所ではまともに風が当たって身体ごと吹き飛ばされそう。
一瞬、東側の空が明るくなり、彼方に山並みも見えました。
ただ、”これより上にはまとまった雲の塊があるな”と直感的に感じ取れる光景。
実際に上部を見ると行く先が濃いガスに覆われていて、例えこのまま登ったとしても全く楽しくなさそう。
いつぞやの山と渓谷の記事の中で、ある登山家の方が言っていたのですが、「厳冬期の黒部渓谷に身を投じれば一度は悪天候に見舞われる。そういう経験を通じて山の多面的な魅力を知るのも大切だと思う。」というような内容のお話だったのですが、僕もそれには共感します。
でも、それは悪天候時に”停滞”することで知れる魅力であって、”吹雪の中で行動して魅力を知ろう”という真意ではないのだと思います。
土砂降りの雨や深々と降り続ける雪ならまだしも、暴風雨や吹雪は身動きすることそのものが困難。
そんなことを考えながら、ここで撤退を決めます。
単独行動のメリットは、自分の考えだけで即断即決できること。
”判断さえ誤らなければ”という条件付きですが、一度決めてしまえばアクションが早いので、安全確保の確率も上がります。
だから状況判断を見誤らない洞察力と思考力を養うことが大事、と自分に言い聞かせます。
下山も一苦労、みるみるうちに体温が奪われていく
そうと決まれば下山は早いというのがいつものパターンですが、今回は状況がちょっと異なりました。
登ってくるときは登山道に流れていた水が、冷たい風に吹かれてカチカチの氷に。
まるでスケートリンクのように滑ります。
滑ったところで滑落するような地形ではないものの、転倒して骨折でもしたらそれは大変。
ここは一歩一歩確実にグリップする箇所を捉えながら下り、状況によっては座りながら下りるなんて場面も。
下りなので汗をかくこともなく、時間が経てば経つほど風にみるみる体温を奪われていくのが辛いですね。
このように体力的にはまだまだ余裕があり、下りなので本来は苦労しないはずであっても、天候によっては自分の思い通りに歩けないこともあるということを想定しておくべきでした。
たとえ無雪期であっても。
しかし樹林帯まで下りてしまえばもう大丈夫。
今回、森林限界を超えた場所での行動はわずか1時間程度でしたが、ある意味ではとても良い経験ができたと思います。
なぜなら、そもそも厳冬期には最初からこういう天候で入山することはないはずなので、こういった体験は意外とできないと思うのです。
小田越登山口から河原の坊駐車場までの県道25号線はすっかり雪。
結局、誰一人とも会うことはありませんでしたが、タイヤの跡があったのでこの2時間足らずのうちに峠越えをした車がいたようですね。
ちなみに道路を挟んで反対側には薬師岳への登山道もありますし、早池峰山には北側にも門馬コース、鶏頭山のコースもあるので、無雪期にそれらを楽しみにして来ようと思います。
残雪期も楽しそうですね、次回はきっと晴れた日に。