山と溪谷2021年2月号の記事を読んでいて、山での遭難についていろいろ思うところがあり、発展して”自分は何歳まで山に登り続けるのか?”ということを考えてみました。
このブログの読者さんであれば、「そんなの生涯現役に決まっているよ」という方もきっと多いでしょうし、僕自身も最近までそう考えていました。しかし何事にも引退というものがあるのかなと最近思い始めてきました。
山で遭難する人には、僕と同世代や若い世代ももちろんいるわけですが、どちらかと言うと60代とか70代、場合によっては80代なんて事例も結構あるようです。
また、登山歴30年以上のベテランでも決して事故が少なくない、という事実も見逃せません。もちろん無事故で生涯を終える方が大多数でしょう。
道迷いや、転倒・滑落して行動不能になったという事例が多く、正直言って今年48歳で年間30回以上は山で遊んでいる自分にとって、どうしても他人事に思えてしまうのですが、統計の数字は嘘をつきませんから。自分もいつ遭難しても不思議ではないような世代に足を踏み入れているのだと自覚すべきかもしれません。
年を重ねれば体力はもちろんのこと、認知力や判断力、記憶力などが軒並み低下していくわけですから、いかに自分自身の能力を客観視できるかがポイントなのでしょうか。
そう言えば、以前山岳ガイドさんから、”事故を起こせば二度とこの業界で飯が食えなくなる。だから慎重に慎重を重ね…”というお話を伺ったこともあります。どんな山へ行くにしても、必ず前泊を入れるのはそういった理由なのだとか。
ならば、年齢を重ねるにつれてリスクが高いとされる行動を避けて、徐々にレベルを下げて行けば良いのかもしれませんが、リスクの種類や線引きをどこに設定するのかは迷うところ。
例えば単独行を避ける、ナイトハイクをしない、睡眠不足で山に入らない、積雪期に登らない、高所や岩場に行かないなどなど挙げればキリがないわけですが、それならばいつまでも続けないでいっそうのこと”引退時期”を決めてしまえばいいのではないかと、最近思うわけです。
”引退”=”完全にやめる、二度と山に登らない”という短絡的な話ではなくて、その時期までにやりたいことはすべてやる(ように全力で努力する)という意味。自分自身で満足できればある程度終止符を打てるのかと。
スポーツ選手が現役をあっさり退くのは、結果の成否ではなく、それまでのプロセスに納得できるからなのではないでしょうか。
趣味の山歩きと言えど、毎回満足できるような山行を繰り返していれば、”もうそろそろ終わりにしよう”というラインが存在するのではないか。
育児や仕事を抱えて趣味の山歩きが先延ばしになる、世の中にはそんな方が大多数なのも承知ですが、それぞれ事情の中で線引きをするしかないのかと。
身体が動かなくなる年齢まで山歩きを趣味としていたいと思っていましたが、最近は60歳くらいでやめるべきではないか、というのが僕の考え。
「えっ?そんなに早いの」って思われるかもしれませんが、大好きなことだからこそ真剣にやろうかと。
時間は有限だということを強く意識して、残された時間を120%完全燃焼できる、そんな山歩きを続けていきたいと思います。
すべての生命には寿命があり、いつかは幕を閉じる。最も輝いている旬の時を過ぎたら、相応の内容に変化、或いは縮小して生きていくべきなのかもしれない。ビール好きの自分だって年齢とともに徐々に量は減ってやがて飲まなくなるだろうし(本当か?)、車の免許を”返納”するのもそう。引き際って大事だと思う。