北海道の道東には日本百名山に選ばれている山が全部で3つありますが、その中でも阿寒岳は初心者でも登りやすい山で、北海道内にあるの他の百名山に比べて1か月以上雪解けも早いのが嬉しいところです。そのため、5月の連休明けから6月に焦点を絞れば、天気も穏やかで日照時間も長く、快適な夏山ハイキングが楽しめます。
阿寒岳は通常はこちらの雌阿寒岳を指すことが多いのですが、人気も楽しさも雄阿寒岳より雌阿寒岳のほうが上でしょう。そんな雌阿寒岳に5月の連休明けを目がけて訪れてみました。どうぞ最後までお付き合いください。
雌阿寒温泉コースから山頂を目指して
雌阿寒岳には3本の登山道が開かれていますが、多くの方は雌阿寒温泉からのコースを登っているようです。今回も雌阿寒温泉コースをご案内します。
まずは、雌阿寒温泉にある無料の公共駐車場で準備をし、約200mくらい道路を戻ると登山口があります。
道東道が足寄まで延伸しており(2018年5月現在)、札幌から4時間以内でアクセスできるようになりました。道外から道東に山々に来られる方であれば、距離的には釧路空港が便利ですが、新千歳空港でも大丈夫。レンタカーを借りてすぐに高速道路に乗ってしまえば、それほど苦労せずに雌阿寒岳へアクセスすることができます。
駐車場の入り口には立派な水洗トイレがありますので、ここで済ませてから出発。コースの大半は森林限界を超えて開けていますし、入山者も多いので、ここが最後だと思って済ませましょう。マラソンのレースでも途中でトイレに行きたくなるのは嫌なので、レース開始数時間前から飲料の種類や摂り方を気にかけますが、登山も一緒です。コーヒーなど利尿効果があるものは摂取を控えましょう。
登山口には登山者名簿がありますので、代表者が記入します。
- 登山開始日時
- 氏名、同行者の男女内訳
- どの登山口から登って、どこへ下山するか
下山時も忘れずに時間を書くようにしましょう。
雌阿寒温泉コースは距離が短いぶん、全般的に急な登りだと感じるかもしれません。最初はゆっくり登ってウォーミングアップを。林内は若干雪が残りますが、差し支えないレベル。
林内を3合目付近まで登ると、森林限界に近づきます。この付近から山頂付近が見えるようになり、振り返ると眼下に緑の大海原が広がっているのを確認できますよ。
尾根に取り付くまで進路を東側に取ります。途中の沢地形には一部雪が残りますが、登山道は沢を横断するだけなので、心配ありません。
このあとは尾根地形となり、8合目まで岩とハイマツのミックスされた登りが続き、グングン標高を上げていきます。ハイマツのトンネルを抜けたり、大きな岩を跨いだりと、森林限界を超えた場所ならではの地形が続くので飽きることはないでしょう。
隣にはどっしりとしたフップシ岳。道東の山々は、山相互が絶妙な位置関係にあることが多いため、絵になる景観を楽しませてくれます。
振り返ると真っ青なオンネトー。太陽との位置関係上、朝の方が青く見えるでしょうね。8合目付近までずっと楽しませてくれます。
8合目まで登ると山頂がかなり近くなってきます。大きな岩があるので、岩陰が休憩ポイント。山頂部は風が強いことが多いので、この付近でジャケットを着たり、装備の点検を済ませておくのがいいでしょう。特に、帽子が飛ばされないように気を付けて。
最後のガレ場を登りきるとそこが9合目で火口縁に到着します。9合目のの標識が見えますので、足元に気を付けて一歩一歩丁寧に。
9合目の標識を過ぎると右手に赤沼を見下ろしますが、崖になっているのでロープの中には入らないようにしましょうね。
阿寒富士の山頂部も見えてきます。
激しく強が吹く場合、山頂まで登らずにここで引き返すことも検討しましょう。
かなりの迫力。ドローンで赤沼から見上げるように撮影したいですね。
ここまで登って初めて姿を見せる雄阿寒岳と阿寒湖。日本百名山の斜里岳までは直線距離で80kmくらいので、条件が良ければ見えるでしょう。3連休で晴れ続きであれば、雌阿寒岳、斜里岳、羅臼岳と3日連続で無理なく日本百名山に登ることも可能です。
雌阿寒岳の山頂部。360度の展望が楽しみながらランチタイムを過ごしたいところですが、東から風が吹きあがってくる場合は、早めに引き上げた方がいいでしょう。
風が無ければ頂上の付近の登山道上を避けて、阿寒湖側の斜面でのんびり過ごしたいですね。山頂標識付近は写真撮影したい人のために開放するのがマナー。
雌阿寒岳山頂から阿寒富士を目指して
山頂を越えて阿寒富士を目指すと、眼下に青沼が見えてきます。外輪をぐるりと回るように標高を下げながら阿寒富士とのコルを目指しましょう。
阿寒富士へは急な登り返し見えて辟易するかもしれませんが、最低コルからの標高差は220mくらいです。数字は嘘をつかないので、見た目に騙されずに、はりきって行きましょう。雌阿寒岳から阿寒富士までの往復所要時間は通常2時間程度。
途中に阿寒湖畔コースとの分岐点、9合目標識をパスしてザレの斜面を下りていきます。火口から蒸気がモクモクと上がっており、火山性のガスの匂いがしますので、捲かれないように気を付けながら下ります。
雌阿寒岳と阿寒富士のコルまで下りたところから雌阿寒岳を振り返ると、今までとはちょっと違った眺めが楽しめますよ。
阿寒富士の登り口はわかりずらいかもしれませんが、取り付くとあとは見失うことはないでしょう。残雪があると適当にジグを切りながら登ることになるのでしょうが…
上の画像のように、太陽の位置によっては、雌阿寒岳に阿寒富士の影が映りこむ時間帯があります。
阿寒富士のザレはそこそこの深さがあります。一歩一歩捉えながら確実に前進を。ザレが深いと登りは疲れますが、下りは足を優しくいたわることができるので一長一短がありますね。
阿寒富士の山頂からは、雌阿寒岳と雄阿寒岳の両方を眺めることができます。一等三角点もあり、ぜひとも訪れたいポイント。しかも、雌阿寒岳の山頂に比べて登る人が圧倒的に少ないので、おススメのポイントです。
阿寒富士は雌阿寒岳のついでに登られる運命の山ですが、雌阿寒岳や雄阿寒岳と同等に阿寒富士を目的地とした登山があってもいいと思います。
※音が出ます。ご注意ください。
雌阿寒岳から阿寒富士に登ったら、オンネトーに下山するのが一般的です。しかし、再び雌阿寒岳に登り返して雌阿寒温泉へ下山するのもそれほど大変ではありません。
9合目からの下りは慎重に。晴れていれば問題ありませんが、ガスがかかると未知に迷うこともありえます。マーキングを見失わないように注意して下山しましょう。
下山後は野中温泉さんで汗を流して、さっぱりしたいところ。名湯としても有名なので、雌阿寒岳に登らないで温泉に入る目的だけで訪れたとしても、十分な価値があります。