アポイ岳は日高山脈の南端に位置し、固有種の高山植物が多い花の名山です。標高が低くて比較的易しいハイキングコースですが、この標高でたくさんの高山植物を楽しめる山は、かなり稀な例です。
また海岸に近いためにとても眺めが良く、道内の著名な山の中では比較的雪解けが早いこともあり、冬の間に鈍ってしまった身体を慣らすためには最適の山でもあります。「夏山シーズンの最初はアポイから」というハイカーも多くいるのではないでしょうか。
この記事では、本格的に花が咲き始める5月中旬以降に登ることを想定し、ゴールデンウィーク前の閑散期に下見を兼ねて訪れてみました。記事中にお花の紹介はほとんどありませんが、初めてアポイ岳に登る方にとって、事前の情報収集の参考になれば幸いです。
〇2020年お正月のアポイ岳についてはこちら。
舗装された立派な駐車場で準備をし、トイレを済ませてから登り始めよう
アポイ岳は日高山脈の南に位置しているため、札幌や帯広、釧路などの都市圏からもかなり距離があり、アクセスに時間を要します。苫小牧方面からのアクセスの場合、日高道の無料区間を利用すると便利。日高道は少しづつ延伸されつつあり、2018年5月現在では厚賀ICまで開通しました。静内までの区間は事業化されているため既に着工中ですが、浦河までの区間は計画段階です。
最後まで舗装された道が登山口の駐車場へ繋がっており、駐車場もよく整備されています。ここで身支度を整えてスタート。
とてもきれいな水洗トイレがありますので、ここで用を足してからスタートしましょう。なお、山中には携帯トイレのブースがあります。
2015年にユネスコの世界ジオパークに認定されたことがきっかけとなり、高山植物の保護や、登山者のマナー向上が強く求められています。
登山道から見られるお花について紹介されていますので、チェックしてから出掛けましょう。お目当てのお花がどんなところに咲くのか、ご迷惑にならない範囲で事前に尋ねておくのもいいでしょうね。パトロールの方も登っていますので、教えていただけるかもしれません。
無人の入林届出所がありますので、中に置かれているファイルに必要事項を記入しましょう。これも登山者の務め。
ポンサヌシベツ川に架かるアポイ橋を渡り、しばらく作業道を歩いて登山口を目指します。アポイ岳もストックの先のキャップを装着するように推奨されていますが、使用しなくても問題ない方は最初から持っていかないという選択肢も考えたいところ。
私個人の意見として、キャップが脱落してゴミになっている場面を何度か目撃していますし、キャップが無い方が地面をしっかりグリップして下山時には特に安心なので、キャップを使用することはあまりありません。それよりも、突く場所を見極めることだったり、使用しないほうが良い場面を判断して収納したりすることのほうが大切だと考えています。
作業道を離れると、いよいよ登山道に入ります。最初に小川を渡渉しますが、飛び石で渡ることができるレベルですが、川の中で靴底を洗ってから入山するように推奨されています。
川を渡ったところが1合目。山頂まで約3.8kmあります。5合目まで数か所の休憩ポイントが用意されていますので、のんびり登りましょう。
春は周囲に植生がほとんどないため、すっきりした林の中を歩くことができます。登りやフラットな箇所が繰り返しになりますが、全般的にこのような調子が5合目まで続いていきます。
5合目の手前くらいから登山道に石がゴロゴロしてきますので、足元には注意しましょう。
ゆっくり歩いてもせいぜい1時間30分くらいで5合目に到達できます。5合目には小屋と携帯トイレのブースがありますが、晴れていれば小屋の中で休むより、軒先から山頂を眺める方が気持ちがいいでしょう。
おやつタイムに最適な場所ですが、風が強く吹くこともあるので、ゴミが飛ばされないように配慮しましょうね。
5合目からは登山道と周囲の景観が一気に変わる
アポイ岳はこの5合目で森林限界となるので、これ以降は周囲が開けた岩場が中心に様変わりしていきます。登りもここからが正念場。山頂までまだあんなにあるのかと滅入る方もいるでしょうが、一歩一歩を積み重ねることで、必ず山頂へ至ることができるところに登山の醍醐味があります。
"Each step leads to the victory."
これはマラソンで知った言葉ですが、登山にも通じるものがあります。
5合目の小屋を離れて、いよいよ登りに差し掛かります。クマよけの鐘が設置されているので鳴らしたくなりますが、思ったより大きな音が鳴りますので周囲に人がいないか配慮したいところです。
登山口で紹介されていたショウジョウバガマを発見。群生しているわけではなく、日陰に咲いているので見つけづらいかも。
馬の背の手前が7合目で、小屋からここまでがこのコース一番の急登箇所。
「はんれい岩質とかんらん岩の互層」と言うそうです。
急登で足元ばかりを見ていると気付かないものですが、斜度が緩やかになって周囲を見渡す余裕が出てくると、海岸線が見渡せることにやっと気付くかもしれませんね。馬の背に上がりきる直前から様似方面の眺め。
馬の背の吊り尾根とアポイ岳の山頂部。再び8合目から登りがあるので、息を整えながら馬の背の平坦地を楽しみましょう。
ハイマツの根本など、ところどころにヒメイチゲが咲いていました。とても小さくて周囲の色に同化しているので、注意していないと見つかられないかも。
8合目を過ぎると吉田岳やピンネシリまでの縦走路全体を見渡せるようになります。吉田岳はアポイ岳とほぼ同じ標高、ピンネシリはさらに150mくらい高いんですね。吉田岳までなら気軽に足を延ばせますが、ピンネシリまで縦走するとなると、あちらから下山することを考えたいですね。
マダニが多いことで有名なので、時期や服装を選んで訪れたいところ。
一部にはロープが張られていますが、掴まってはダメですヨ、という注意書きも。バランスを取るために触れるくらいならまだしも、ガッチリ掴んで体重をかけると、外れてケガをすることがあります。これは全国どこの山でもほとんど共通の話。
最後の岩場を登りきるとまもなく山頂へ到着します。馬の背で横風が強い時は、この付近で立ち往生しかねないので、無理せず引き返したほうが無難です。
岩場を登りきってアポイ岳の山頂に到着。一度森林限界を超えたハズですが、山頂部は樹木に覆われています。東側に向かって雪庇が発達するのでしょうか、4月下旬でも多くの雪が残っています。
幌満お花畑方面はまだ雪が残っています。お花畑から幌満方面への登山道は10年以上前に閉鎖されています。お花畑の雪は5月上旬を過ぎれば消失すると思います。
ピンネシリ方面への縦走路にもまだ雪が残ります。こちらも完全消失は5月上旬頃でしょうか。でも、マダニの活動は未だかもしれませんね。
追跡温度計が設置されていました。ログを取っているのでしょうか。気温は10.6℃、登山には快適な気温です。
山頂広場でひと休みしたら、帰路は往路を引き返します。急な箇所がいくらかあるので、浮石で滑らないように一歩一歩注意しながら下山しましょう。
アポイ岳はお花の開花時期に登山者が集中しますので、お花にあまり興味がない方は春先か9月中旬以降の登山をおススメします。
下山後のお風呂は近場のアポイ山荘かみついし昆布温泉がおススメ
下山後すぐにお風呂に入りたい方はアポイ山荘での入浴がおススメですが、1時間くらい運転してから休みたいという方には、道の駅「みついし」に併設されている「蔵三」をおススメします。ここのお風呂は太平洋を眺めながらゆったりでき、波の音を聞きながら露天風呂に浸かることができるんです。
日帰り入浴の営業時間も長く、6時から朝風呂に入ることもできます。
入館料は券売機にて。北海道の公衆浴場入浴料金の統制額440円(大人)に設定されており、オロナミンCセット料金や入浴+食事のセット料金などの設定もあります。
山に登って、お風呂に入って、美味しいものも食べられるなんて最高の休日ですよね。
冷凍ストッカーの中には海の幸がたくさん用意されています。真夏でもなければ購入して自宅まで解凍しないで持って帰れるでしょう。
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