こんにちは!コモ子@やまたび北海道(@ComocoHk)です。
今日は、北アルプス「笠ヶ岳」についてのお話をしていきます。
55歳から登山を始めた母が、北海道から毎年のようにアルプスに通い続け、71歳になって最後に「登りたい山」として残っていたのが笠ヶ岳です。
数年前から「連れて行って欲しい」と言われており、今回やっと登ることが出来ました。
1か月前にエアアジアで新千歳ー中部の航空券を取り、数日前になってから情報を集め、結局は当日になって笠新道コースでの日帰りを決めた今回の山行。
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笠ヶ岳は北アルプスのメジャーな縦走ルートから離れていること、登山口との標高差や距離もあるため、健脚者向けなこともあり、この山域にしては訪れる人が比較的少ない名峰です。
しかし、深田久弥氏の「日本百名山」(*みなさん読んだことはありますか?ぜひご一読を)にも選ばれていることからもわかる通り、遠くからでも特徴的な姿を捉えることができます。
さて、笠ヶ岳に登る主な登山道は3コースあります。
- 緩やかだけど所要時間がかかるロングコースの「小池新道」
- 急だけど最短ルートの「笠新道」
- 訪れる人がほとんどいないと言われている「クリア谷」
これらはいずれもコースタイムが15時間以上で設定されているため、通常は山中1泊で計画します。
しかし、最短ルートの笠新道をピストンする方々の多くが、笠ヶ岳山荘での宿泊またはキャンプをしているのか言えば必ずしもそうではなく、日帰りをしていることが少なくありません。
この記事では2018年8月初旬の山行をもとに、笠新道を使って日帰りで山頂を目指す方に向けて、
- 新穂高温泉の駐車場や登山口について
- 登山口から杓子平まで
- 杓子平から山頂まで
これらについてお伝えしていきます。
どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
新穂高温泉の駐車場と登山口について
笠ヶ岳登山の起点となる新穂高温泉には、新穂高センターという奥飛騨温泉郷観光案内所と登山指導センターがあります。
登山者はここで登山届や下山届を提出してから出発することになり、平湯温泉からのバスの発着もここの正面にあるバス停からとなります。
ここから笠ヶ岳や双六岳、あるいは槍ヶ岳や穂高岳へと登るわけですが、新穂高センターには24時間使用できる水洗トイレがあり、自動販売機や公衆電話も利用することができますので、出発準備を十分に整えてから歩き始めることができます。
新穂高地区の駐車場は、県営や市営など全部で11か所に分散しており、有料駐車場と無料駐車場、24時間営業しているものとそうではないものがあります。
通常「市営新穂高第3駐車場(登山者用無料駐車場)」に駐車するのが一般的で、もしここが満車の場合は、「鍋平登山者用駐車場(無料)」に駐車することになります。
この場合、新穂高センターまでの歩行時間が長くなり起伏もありますので、特に下山時において疲れが倍増することになります。
そのため週末や繁忙時期には深夜もしくは早朝に到着して、市営第3駐車場を確保することを推奨します。8月の最盛期は夜が明ける前の3時くらいでもすでに満車となっていることもあるようですので、最悪の場合に備える覚悟も必要です。
「市営新穂高第3駐車場」は県道槍ヶ岳公園線のスノージェットの中から、標識に従って深山荘方面に左折して進入します。
ナビがあれば問題ありませんが、そうではなくて暗い時間帯に初めて行かれる方は、事前にグーグルマップで確認しておきましょう。
私が訪れた2018年8月上旬の22時過ぎには、駐車場の入り口に「満車」の看板が立てられていました。
しかし、警備員の方から空きスペースを丁寧に教わり、何とか駐車スペースを確保。
駐車場は数ブロックに分かれており、奥に行けば行くほど新穂高センターへ通ずる遊歩道に近くなります。
場内は狭いので、当て逃げされることがないよう区画内に整然と駐車し、特に角の区画に駐車する際は注意しましょう。
駐車場から遊歩道を歩き、車道に出ると県営公共駐車場が見えてきます。
参考リンク①「新穂高駐車場マップ(PDF)」高山市観光情報
参考リンク②「新穂高温泉駐車場案内」岐阜県北アルプス山岳遭難対策協議会
新穂高センターから林道歩きで笠新道登山口。急登を詰めて杓子平へ
新穂高センターから笠新道の登山口までは約4kmの道のりが続きます。
平坦な林道歩きのため、縦走装備でもなければ1時間もかからずに着くことも可能。
走れる方ならゆっくりとウォーミングアップを兼ねて。
登山口では美味しくて冷たい水が豊富に取れますので、これからの登りに備えてひと休みしておきましょう。
出足は数時間にわたって暗闇の中での行動。
久しぶりのアルプスなので、事前に山と高原地図「日本アルプス総図」を購入して全体のイメージを膨らませてきました。
海外旅行と一緒で、自分が行くところをピンポイントでイメージするよりも、全体像から俯瞰することでワクワク感が全然違うんですよね。
そのイメージをしながらの夜間行動でした。
笠新道の登山口から杓子平まで、しばらく登りが続きます。
この登りも北アルプスの3大急登に決して劣らないレベルと言われていますが、私見ではそれほどないというのが正直なところです。
むしろ登山口から杓子平までの標高差が1,100m近くあり、延々とジグを切って登るところに飽きを感じるので、変化に乏しいところが精神的に辛いと思います。
また、登山道そのものが土より石の比率が多いため、速度を上げるのが難しいということも特徴です。
そのため、実際には登りよりも下りの方が不適なのではないか、というのが私の感想。
ただ、登りの途中で振り返ると穂高連峰の山並みや槍ヶ岳が間近に見えるのが嬉しいところ。
残念ながら、早朝は逆光となってシルエットしか確認できないのですが、槍ヶ岳の南側から昇ってくるご来光を拝むことが出来ます。
かなり上部まで達しても新穂高温泉が確認できます。
下山時は、谷底が見えているのになかなか近づかないジレンマを感じながら下り続け、膝が笑い始める頃になって、やっと登山口に到着できます。
そのくらい長いと感じる道のり。
杓子平の手前まで標高を上げると、彼方に乗鞍岳と奥にはかすかに御嶽山、その手前には焼岳を確認することが出来ます。
見渡す限り、ズラリと日本百名山の山々が並びますが、その中でも焼岳が印象的。
大正池の背後にどっしり座る姿と比べて、こちらから見るとゴツゴツしてとても荒々しく見えるんですね。
こちらは杓子平から望遠で捉えた焼岳の姿。
山肌が荒々しいですね。
杓子平から笠ヶ岳までの長い道のり
ハイマツのトンネルを掻き分けると、そこは杓子平。
一気に大パノラマが開け、目指す笠ヶ岳の全容を捉えることが出来ます。
いっぽうで、山頂の手前を横切る深い渓谷を大きく迂回していくことをイメージすると、まだまだ半分くらいの行程が残っているということに気付いて、ちょっぴりがっかりするかもしれません。
杓子平は、これまでの急登で消耗した体力を回復させてくれるかのようなフラットな地形で、緑と花に溢れています。
お昼くらいになると雪が解け始めて一部に水が流れていますので、のどの渇きを潤すことができますよ。
ある程度平坦な地形が続いたら、今度は稜線上の抜戸岳への登りに差し掛かります。
ここはゴツゴツした岩場ですが、周囲は緑と花が咲いており、運が良ければライチョウの姿を見ることができます。
稜線までの標高差は約350mほどあるため、かなり長く感じられる場面。
やや苦しいところですが、稜線から眺める北アルプスの山並みを楽しみにしながら、せっせと登って行きます。
私たちが訪れた時間帯は、山荘やキャンプで夜を明かした人たちが続々と下山してくるところでした。
みなさん満足して表情が明るく、生き生きしています。
登りの途中で岩場の手前に雷鳥を発見!
岩の色に同化して気付きにくいので、ゆっくり歩いていなければ見つけられなかったかもしれませんね。
抜戸岳への登りは急登なので、休み休み慎重に。
振り返ると杓子平から渓谷へと落ちていく地形を一望できます。
学術的には日高山脈に見られるカール地形とはやや異なるそうですが、笠ヶ岳の東斜面もカール地形の一つ。
飛騨山脈も日高山脈も東斜面にカール地形が出来るのは、気象条件と密接に関係があるのだとか。
いずれにせよ、花や水が豊富で楽園と呼ぶのにふさわしい場所ですよね。
そうそう、2019年12月に登った台湾で2番目に高い「雪山」にもカール地形がありました。
抜戸岳の手前まで上がると、笠ヶ岳へと続く稜線を一望できます。
北海道のニペソツ山へ続く稜線のように東斜面が急斜面で、いくつものアップダウンがあり、山頂はとても端正です。
ぜひ雪がある時期に再訪してみたい、と思わせるような大変美しい姿。
このブログは基本的に北海道の山を中心に書いていますが、時間をかけて飛騨山脈の山々にも訪れて記事にしていきたいと思います。
稜線上にはお花畑が多く点在しています。
杓子平ではすっかり綿毛になっていたチングルマも、稜線上では満開。チングルマを見つけると初夏の訪れを感じますよね。
やや長い稜線を詰めていよいよ山頂が近くなってくると、笠ヶ岳山荘が見えてきます。
日帰りをする予定なら、抜戸岳でザックをデポしてサブザックに水と食料、雨具だけ持って、ほぼ空身で往復したほうが楽でしょう。
山荘の手前にはキャンプ指定地と水場への下り口があり、しっかりとした案内標識も設置されています。
キャンプ指定地一帯は広場が点在しているので、谷からガスが上がってきたら進路に注意したいところ。
雪渓は例年8月中旬くらいまでは残るようで、私が訪れた2018年8月5日時点でもまだ水を取ることが出来ました。
小屋の手前でひと休みしたら、いよいよ山頂までの最後の登り。
小屋から山頂まではガレ場の斜面を慎重に詰めていきます。
平たい石はスライドして崩れやすいので、後続者がいる場合は特に注意して登りましょう。
振り返ると北アルプスの山並みが一望でき、次の山旅への意欲が湧いてきます。
10年以上前に黒部五郎岳、三俣蓮華岳、鷲羽岳に登ったことがありますが、すでに過去の記憶。再訪してみたいです。好きな山には何度も通いたい派の私。
長い道のりを経て山頂へ。
今回私は71歳になる母を連れての日帰りをしました。
この後私は交通事故で年内の山行は一度も行けなくなりましたが、その前に楽しめて本当に良かったと思います。
人生はいつ何が起こるか分からないですからね。
運命の女神には前髪しかないと言われます。
登山者駐車場を深夜の23時出発でナイトハイク。
山頂到着はなんと12時間後の午前11時。71歳でよく頑張りました。
健脚な方なら山頂をピストンしてすでに下山している時間ですが、いわゆる「老人タイム」だと12時間もかかるのです。
この後、さらに8時間30分を要して下山したので、笠ヶ岳日帰りに20時間30分もかかったことになるのですが、古希を過ぎてもなお、徹夜で山中を20時間以上歩き通したこと、笠新道を往復したことは素晴らしいと思います。
山を目指す方の動機は人それぞれですが、強い目的意識と目標達成に対する執念が困難を克服する原動力になったということは確かなようです。
大人になってから母の情熱から学びがあった、そんな笠ヶ岳でした。
山頂は飛騨山脈の中でもやや独立して位置しているので、多くの山々を一望できます。
なお、2018年は梅雨明けが早くて連日猛暑だったということもあり、稜線上でも20℃を越えて日差しも強く、消耗が激しい山旅となりました。
私は念のため水を6リットル担いで上がりましたが、予備があるということは心に余裕を生みます。
また、高山帯は紫外線が強烈なので、襟や上腕の日焼け対策も十分にしておきたいところ。
ランナーにはよく知られた話ですが、首周りの日焼けは運動機能を著しく低下させるので、後頭部から首にかけてすだれが付いた帽子は必須です。
もちろんサングラスと日焼け止めクリームも。
私は残雪期から晩秋までノースフェイスのエンデュランスキャップという帽子を愛用しており、首周りの日焼け対策にはこれはいいと思います。
生地が厚めのため夏場はやや暑いのが難点ですが、価格も安いのでコスパはなかなかです。
帰りも長い道のりですが、抜戸岳まで戻ればあとはほとんど下りのみとなります。登山事故の7割は下山時に起きるという統計があるようですので、一歩一歩慎重に下りていきます。
私見では下りでの事故の要因として、スピードが付くため視野が狭くなりがちでルートを外れやすいのではないかと思います。決してケガではなく、道迷いなのです。
ですから、
- 足元をよく見ると同時に、周囲の地形をよく見ておくこと
- 登りの時点で下山時に迷いやすい箇所をしっかり見積もっておき、要すればマーキングしておくこと
これらが大切だと考えます。
今回はスケジュールの都合で日帰りをした笠ヶ岳でしたが、できれば山中でキャンプをしながら飛騨山脈の奥行きをもっと深く感じたいと思いました。
これから笠ヶ岳を目指す方にとって参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
〇下山後に利用した平湯温泉についてはこちら★当ブログイチ押し!★
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