こんにちは!コモ子@やまたび北海道(@ComocoHk)です。
今日の話題はニペソツ山。
杉沢コースについて書いていきます。
東大雪のニペソツ山は、北海道の登山対象の山として屈指の人気を誇ります。
日本百名山ではなく二百名山に選ばれている山ですが、リピーターも多く、シーズン中はずっと混み合う山ですよね。
何と言っても、地元北海道の登山者に絶大な人気を誇ります。
ところが2016年夏の台風や大雨の影響で、東大雪地域の林道は壊滅的な被害を受け、復旧の見通しが立っていないのが実情です。
この記事では、2017年6月19日現在での状況を確認し、
- 音更川本流林道と16の沢林道の被害状況がどのくらいなのか
- 被災した林道を国道のゲートから歩いて、登山口まで到達できるのか
- 登山道の状況はどうなのか
これらについてお伝えしたいと思います。併せて、前天狗から眺める大雪山系の山並みについてもご紹介します。
【追記】
今後のニペソツ山へのメインルートは、幌加温泉からのルートになりそうです。
本記事中の杉沢ルートからのアプローチは、現実的ではなくなるものと判断していいかもしれません。
この記事はしばらく残しますが、杉沢ルートを使用せず幌加温泉からのルートでの登山を推奨します。
※2017年8月1日付で北海道森林管理局より発表された「東大雪地域の登山口に通じる林道の状況について」によると、16の沢林道は「大規模災害により当面復旧の見通しなし」という表現に変わりました。
「~のため通行止め」という表現よりも重い内容だと捉えることができそうです。
※2017年秋頃以降、廃道になった幌加温泉からのルートが再整備されて通行できます。
最新情報は「ひがし大雪自然観公式サイト」さんのウェブサイトをご参考ください。
※2018年7月28日、幌加温泉コースで道迷いによりヘリで救助された事例があります。お気を付けください。
ゲートを越えるとすぐに林道が消失する現状
2017年の夏山シーズンを前に、林道と登山道の状況を確認しに行ってきました。
国道273号線を北上する方向に、分かり易くて目立つ看板が設置されています。
ゲートはもちろん閉ざされていました。
石狩岳やユニ石狩岳、音更山、岩間温泉へもこの入り口から入林しますが、被災により通行できません。
なお、2017年8月頃から従来の音更川本流林道ではなく、北側の林道からアプローチできるようになっています。
詳しくは、前出の「東大雪自然館公式サイト」、あるいは【石狩岳シュナイダーコース・岩間温泉】登山口までの道路状況と温泉の現状は?を参考にしてください。
ニペソツ山に登りたいと考えている人にとって、林道がいつ頃になったら復旧するのだろうか、という点が一番の関心事。
ですが、ゲートを入って1分も歩かないうちに、すぐにこのありさま。
川のように見えますが、林道の土砂がこれほど流出したということです。
流出した箇所は水が溜っているので、林内を歩いたほうが賢明です。
こうして画像を見てもらえば、おわかりいただけるかと思いますが、被害はかなり甚大です。
被災箇所を大雑把に言えば、
- ゲートを越えてすぐの箇所から石狩岳への分岐点までの区間
- 林道が川を離れて登りに差し掛かるまでの区間
- 登山口まで最後の約1kmの区間
これらの箇所に被害が集中しています。つまり、川に近づけば道が消失するということです。
これは、装軌車両でも通行できないほどですので、オフロードバイクやMTBでも難しいでしょう。
西クマネシリとピリベツ岳がきれいに見えているだけに、この状況を見るのは辛いところです。
土砂崩れによって、倒木が堆積している箇所。林道の途中で、突然こういう箇所が現れるので、心臓が止まりそうなくらいビックリします。
素人の視点では復旧不可能と思えるような状況ですが、測量していた土木関連の業者さんによると、いずれは復旧するとおっしゃっていました。
この地域の林道復旧には、これから優先順位を決め、莫大な復旧予算を計上し、設計のやり直しも必要とのことです。
いずれにせよ、年内どころか数年間の復旧は難しいというのが私の見解です。
被災した林道で転んでケガをした、なんて言ったら徒歩での入林も禁止されかねませんので、慌てず慎重に行きます。
川が近づいてくると、ますます荒れ方が酷くなってきます。
自然の力、水による破壊力の恐ろしさを感じます。天気が悪い日に山に入ってはいけない、ということを示唆しています。
河原を歩いてしばらくすると、ニペソツ山登山口へ通ずる「16の沢林道」のゲートと、石狩岳シュナイダーコース、ユニ石狩岳登山口方面へ通ずる「音更川本流林道」の分岐点に到着です。
ゲートも開いており、林道交通安全ののぼりも立てられたままでした。
16の沢林道に入ってから、さらに荒れ方が酷くなる
16の沢林道に入ってから、林道が完全に消失してしまう箇所があります。
渡渉して川の対岸に渡ると、戻れなくなることも考えられるので、ここは林内を藪漕ぎ。
藪と言うほどのものではありませんし、鹿道が発達しているので、川から離れず方角を間違わなければ斜面を登って林内を歩いても問題ありません。
むしろ河原に下りないほうがいいでしょう。
しばらくすると、林道は川を離れてつづら折りになって標高を上げていきますが、こういうところはヒグマとの遭遇が怖いので注意したいところ。
再び標高を下げて川に近くなってくると、杉の沢橋が崩壊しているのが確認できます。
自然の破壊力の凄まじさ。
正直言って、これには度肝を抜かれます。
倒木の上を通過したり、下を潜ったりしながら何とか渡渉し、崩れて崖になっているところを3mくらい登って対岸の林道に戻ります。
対岸から見た状況。
自然の力、言い換えれば気象の力は凄まじい。
極めつけはこれ。
でも、まもなく16の沢林道も終わりに差し掛かり、登山口まで僅かな距離です。
登山口の駐車場には、もちろん車はありませんでした。
こういうところで、万が一取り残されたら最悪の事態。
天気が悪い日は山に登ってはいけない、そして登山口で車中泊をしないほうがよい、ということです。
国道からここまで2時間30分。
下山後は国道まで2時間、合計すると往復で4時間半の林道歩き。
危険箇所を通過するときに2次災害が起きる可能性は十分ありますし、林道でのヒグマとの遭遇も無視できません。
それらを踏まえて考えるならば、
- しばらく雨が降っていないこと
- 日中の時間帯
という条件であれば、ある程度リスクを下げて登山口までアプローチできるでしょう。
それでも、日高山脈などでの河原歩きの経験がない方には推奨できません。
もしこのルートを計画している方がいれば、自分の能力も加味して無理のない計画を立ててもらいたいと思います。
登山は自己責任とはよく言いますが、事故が起きると必ず誰かに迷惑をかけます。
そのことはいつでも心に留めておくべきです。
なお渡渉点は、杉沢橋が崩落した1箇所のみ。
他は対岸に渡る箇所はないので、道がわからなくなって迷っても、対岸に渡ってはいけません。
杉沢コース登山道に被害はない
さてここからは、登山道の状況をお伝えします。
登山口には登山者名簿がありますが、2016年の被災以降、記入はほとんどありません。
ただ、少ないながらも入林している人は確かにいます。
登山口を出発してすぐに渡渉点があります。
以前は十六ノ沢にかかる丸太橋があったはずですが、流されしまったみたい。
杉沢との出合の急尾根が登山道の始まりなので、飛び石で十六ノ沢を渡ります。
こちらは2014年10月の様子。手前の広場も流出したようですね。
登山道の序盤に倒木が2本くらいありますが、その他の被害はほとんどないようです。
急登から始まる登山道ですが、林道歩きですでにウォーミングアップが完了しているので、それほど辛く感じないかもしれませんね。
高度を上げると、ウペペサンケ山が視界に入ってきます。
2018年にウペペサンケ山に登りましたが、こちらも酷い状況でした。
【2018年版】ウペペサンケ山(糠平コース)|林道の被災状況と登山道の倒木や笹刈りなど荒廃の状況について
クマネシリ山塊が見えますが、クマネシリ岳は西クマネシリ岳の裏手になって見えません。
ただ、水平に長い尾根は見ることができます。
手前の標高点・1181の北側にある緩斜面を下りたところが、先ほどの林道にあった杉沢橋のあたり。
小天狗の岩場は慎重に通過しましょう。
このコースでもっとも手を焼く場面。
大きなリュックを背負ったままだと、背中が岩に当たって身体が弾かれるかもしれないので、先に放り投げた方が安全です。
天狗のコルはびっしり残雪が残る
キャンプ指定地となっている天狗のコル周辺は、6月中旬ではまだ雪が残っています。
整地をしないとテントは張れないでしょう。
コル周辺の登山道は、お昼時間帯には雪解けが進み、川のようになります。
朝はまだ寒いので、登山靴を濡らすことなく歩けるでしょう。
コルからは、登り基調に前天狗のトラバースが続きます。
前天狗のトラバースでは石狩連峰の山並みを見渡すことができます。
ガレのトラバースをしながら徐々に上げる高度。
ガスがかかると注意が必要ですね。
厳しい環境で自生するキバナシャクナゲ。
多くの株が自生しています。
キバナシャクナゲは多くの山々で見られますが、私が印象に残っているのは日高山脈のピパイロ岳。
伏美岳・ピパイロ岳|残雪の北日高の山並みが美しい「最高の展望台」へ6月に日帰りで訪れてみよう!
岩場のなかにお花畑が点在し、楽しくなりますよ。
前天狗の手前、標高もいつの間にか1,800mを超えています。
前天狗からニペソツ山と感動のご対面
そしてついにニペソツ山とのご対面。
この感動が忘れられない人が多いのでは?
3回目になると、さすがに飽きてきますが、、、
登山口から天狗岳まで約3時間ほど。ニペソツ山と対面するこの場所まで、国道から6時間ほどを要するのが現状です。
ここから山頂までの道のりは険しい吊り尾根になりますが、いっぽうでお花畑も多いので楽しい行程になることでしょう。
時折りナキウサギのチッチッという鳴き声が聞こえます。
大雪山らしいですね。
開花間近のツクモグサがこの付近から見られます。
ちなみにツクモグサは芦別岳でも見られます。
【芦別岳|新道コース】全周に広がる雲海、残雪と緑と青い空、ツクモグサを楽しみに早朝から山頂を目指そう!
吊り尾根は東側に崩落は進んでいるような箇所があり、ところどころに亀裂が走っています。
またヒグマの痕跡もありました。
振り返って天狗岳。
もし南側からニペソツ山に登ったら、天狗岳をアタックしたいと思うくらいの素晴らしい眺め。
山頂へは南側を回りこむようにして登ります。
ピークの標高は東大雪で唯一2,000mを超えています。
夕暮れの雲海と天体ショー、大雪山系の夜明け
今度は前天狗まで戻って、夕暮れ時のニペソツ山と石狩連峰を静かに楽しみましょう。
これぞ至福のひと時。
深夜は満天の星空を楽しめますが、6月はまだまだ氷点下近くまで冷え込むので、防寒はしっかりと。
そして夜明け。
石狩連峰の背後に北大雪の山並み。
6月中旬は3時半頃には夜明けが始まります。
風もなく暖かい朝の場合、雲海と遥か彼方の斜里岳まで見渡せることも。
前天狗から、斜里岳まで約140km、海別岳まで約155kmもの直線距離があります。
こちらは十勝連峰の山並み。
奥には芦別岳も。
夕張岳もかすかに見えます。
ウペペサンケ山と、奥には然別湖の北側にあるペトウトル山とその周辺。
前天狗を後にし、帰路の途中から見る大雪山系の主要な山々。
石北峠や三国峠周辺の山々。
早朝の山並みを楽しんだなら、早々に引き上げます。
帰りも長丁場、再びあの林道歩きが待っています。
雨が降ると林道歩きが最も危険を伴うので、天候が下り坂のときや急変が予想される時には、計画を中止するほうが安全です。
※当ブログ記事では登山者の目線で状況をお伝えすることを目的とし、被災した林道歩きを推奨しているわけではないことを強調します。
この記事は2017年6月19日の山行をもとに作成しました。