こんにちは!やまたび北海道のコモ子です。
今回は利尻山の話題。この山にナイトハイクでご来光を眺めよう、という計画です。
ご存知の通り、利尻山は日本最北の日本百名山で、利尻島へは北海道の最北端に位置する稚内市からフェリーで渡ります。ただ、陸路で稚内市まで移動するとなると、道北の玄関口である旭川市からでも4時間ほどかかりますので、飛行機で直接アクセスするのが最良です。
そういった地理的な特性を考慮すると、利尻山への日帰りはまず不可能と考えてもいいでしょう。しかしそのようなハンデキャップを乗り越えて、この記事では、
- 札幌から週末の土日2日間で利尻山に登る
- 深夜に利尻山に登って山頂からご来光を拝む
- 利尻島から始発のフェリーで稚内へ帰る
ということをに加え、総予算1万円という制限まで付けてチャレンジしてみました。
一番の悩みは利尻島までの移動距離
この計画では、土曜日の早朝に出発するところから始まります。札幌在住の場合、稚内フェリーターミナルまで概ね310kmの移動になりますので、移動時間を6時間程度をみておきたいところ。
なお、総予算1万円の制限というのは、バイクでの移動なのでガソリン代を低く抑えられた結果。自家用車や他の手段で移動した場合はもう少し費用はかさみます。ちなみにそれぞれの移動手段での概算は、2019年3月現在では、
- 高速バス利用では、往復の正規運賃が11,300円+フェリー代5,000円
- JRの特急(Rきっぷ)利用では、往復で12,550円+フェリー代5,000円
- 新千歳空港から飛行機利用(2019年6月の一例)では、往復14,140円(エクスペディア調べ)
となります。
意外にも、飛行機で利尻島入りするのはかなり格安な印象。いっぽう、1人で自家用車を運転して稚内まで走るのは、費用や時間、運転による疲労を考慮すると、決して賢い選択肢とは言えないかも。それならば金曜夜から深夜の高速バスで移動したほうが良さそうです。
いずれにせよ、山は天気に左右されます。晴れている日にしか登りたくない場合は、スケジュールを柔軟に変えられる自家用車やJRがいいのですが、コスパ重視なら飛行機利用が最良だと思います。
稚内からハートランドフェリーで利尻島へ渡る
稚内から利尻島や礼文島へ渡るには、ハートランドフェリーを利用します。フェリーのチケットは、自動券売機で購入できます。特に予約などは必要なく、バスや電車に乗るような感覚です。
私が訪れた2016年6月頃の料金は2等大人ひとり2,030円でしたが、2019年3月現在は2,500円。それでも格安料金です。
ちなみに、利尻島の鴛泊に到着後に徒歩で移動する場合は、買い物がやや不便です。そのため、稚内のフェリーターミナル到着前に済ませておくのがベター。
出航の15分くらい前に乗船開始となり、素早く乗船します。今回利用した「サイプリア宗谷」という船は2等椅子席が多いので、ゆったりと移動できます。
さて、天気が良ければちょっとデッキに出てみましょう。
稚内から利尻島がすでに見えています。船のデッキから眺めていると、利尻山がだんだん近づいてきて、かなりワクワクすることでしょう。潮風に当りながら「何て美しい山なんだ!」と思うこと間違いなし。
利尻島鴛泊港に着いたら、まずはランドマーク「ペシ岬」へ
稚内から鴛泊までの乗船時間は約1時間40分程度。フェリーでひと眠りしたら到着です。今回のようにナイトハイクをする場合は、深夜まで何もないので、鴛泊港のすぐ隣にあるランドマーク「ペシ岬」を訪れてみましょう。
ペシ岬は周囲を一望できる展望台で、鴛泊に着いたらぜひ訪れたいポイント。清々しい風が吹いて、鴛泊の街並みや利尻山を間近に見ることができます。
利尻山に比べたら遥かに小さな山のようですが、フェリーから下りてすぐに登ると、息切れを起こしながらいい運動になります。
お花好きにはたまらない!平地で鑑賞「高山植物展示園」
ペシ岬を後にして、今度は高山植物展示園へ。ここは無料で解放されていて、いろいろな植物を見ることができます。
利尻島は環境が厳しいため、平地でも高山植物が育つのだとか。
まずは白いコマクサから。
そしてこちらはリシリソウ。その他にもレブンコザクラ、チシマキンバイなど、珍しい植物が展示されています。
今回は、ファミリーキャンプ場「ゆ~に」さんにお世話になるため、こちらの「高山植物展示園」はすぐ近く。鴛泊のフェリーターミナルからでも徒歩で訪れることができますよ。
さらに、キャンプ場の目の前には利尻富士温泉がありますので、テントを張って登山準備を済ませたら、お風呂にゆっくり浸かり、昼からビールを飲んで夕方には寝ることができます。
管理棟で受付を済ませたら、快適なサイトで一夜を過ごします。
この旅は1泊2日1万円未満、ナイトハイクをして始発便で帰るというコンセプトなのでテント泊。でも、やっぱり次回はお宿に泊まって美味しい海鮮の幸をいただきたいものです。
キャンプ場の向かいにある利尻富士温泉。こちらでは自動販売機で飲み物を調達できますので、登山に持参する飲料水などは稚内からわざわざ持ってくる必要はありません。
もちろんビールも購入できます。
利尻山ナイトハイク。山頂からご来光を眺めるため深夜に出発
さて、夜明けが早い6月中旬に山頂からご来光を楽しむためには、遅くとも23時には出発したいところ。キャンプ場から山頂まで4時間30分を見積もります。
翌朝は8時30分始発のフェリーに間に合わせるため、テントの撤収も済ませておきます。そのために30分前の22時30分に起床。宿泊装備はキャンプ場にデポしておきます。
登山口となる北麓野営場までは、車も通らない暗闇の中をとぼとぼ歩きます。
私はよく深夜・早朝の時間帯から山歩きをするのですが、野生動物に出くわしてドキドキすることがよくあります。ですが、利尻島にはエゾシカやヒグマといった大型の野生動物はいないそうなので、動物の心配をせずに歩くことが出来るというのは安心です。2015年に訪れた夕張岳では、林道わきの河畔林をヒグマが駆ける場面に遭遇しました。また、2018年のウペペサンケ山では、エゾシカが私を見つけて突然逃げていく音に何度も心臓が止まりそうになりました。
ナイトハイクでは月明りとヘッドライトが頼り。目の前の数メートルしか見えないなか、順調に高度を稼いでいきます。
周囲が全く見えないので黙々と歩くことになります。富士山のご来光登山とは異なり、完全に孤独な旅ができるのがこの山のいいところかもしれません。
ファミリーキャンプ場「ゆ~に」さんから、6合目の第1見晴台まで約2時間30分で到着。このペースで登れば、午前3時30分の日の出時刻に間に合います。
その後、8合目の長官山までが50分、長官山を過ぎたところには、山小屋があります。その脇を通ってどんどん高度を稼ぎましょう。
さて今回訪れたのは、2016年6月12日。北海道の主要な山々の6月は、まだ雪が残ります。残雪が懸念材料だったため、今回はトレランシューズではなく、4シーズン用のブーツで登りました。
避難小屋付近に雪が残る程度で、それ以降は山頂直下のごく一部以外はほとんど残雪はなかったのですが、早朝なので一部凍結している箇所もありました。アイゼンは持って行かなくても、キックステップが出来るような硬いソールの登山靴を推奨します。6月の同じ時期、2018年の芦別岳新道ではトレランシューズでちょっと憶する場面もありました。北海道の6月の登山はいつも足回りで悩みます。
空が明るくなり始めた頃、もう利尻山の山頂は近い
午前3時を過ぎると、周囲はかなり明るくなってきて、景色がわかるようになります。自分がすでにかなり高所まで登ってきたことに驚きます。
後ろを振り返ると、8合目の長官山。そして奥には鴛泊港とペシ岬が小さく見えますね。
いよいよピークの利尻山神社が見えてきました。時間は午前3時40分。すでに日の出の時間です。山頂直下までは北麓野営場から約4時間かかりました。
そして利尻の山頂から見下ろす雲海とご来光。
ほぼ無風で孤独の世界。ここまで誰一人ともスライドしていません。「至高のひと時」とはこんなとき。みなさんも味わってみませんか。
もう少し佇んでいたいところですが、フェリーの始発時間に間に合わせるためには、ゆっくりしていられません。でも、利尻山の登山道はよく整備されているので、計画通りの時間で下山できるでしょう。
鋭鋒として知られる利尻山だけあって、方角によってはかなり険しい箇所があります。どこの山でも山頂からの眺めを追求すると、ついつい広場の端っこまで行ってしまいがちですが、油断できません。山の頂でまさかの滑落をした例はたくさんあります。気を付けないと。
まだ午前4時台ですが、明るくなった登山道を下山します。
上部はザレ場の土砂流出を防ぐために木段が整備されています。この時間帯は誰とも出会いませんでしたが、ピーク時は多くの人で賑わうことでしょう。下山者が後傾になってザレで滑って転び、登ってくる人にスライディングタックルしてしまったらシャレになりません。すれ違い時はお互い譲り合って。
9合目には携帯トイレのブースが設置されているので安心。
最北の6月中旬ということで、お花はまだ早いと思っていましたが、上部には多くのお花が咲いています。ご来光登山では登りの時間に確認できないため、こうして下山時に観察することになります。
帰りは「利尻岳山小屋」の内部を覗いてみます。
設備は避難小屋という感じ。キャパが狭いので、最初から泊まることを想定しないほうがいいでしょう。
この小屋については北海道夏山ガイド⑥「道東・道北・増毛の山々」でも紹介されています。
長官山付近から見上げる利尻山。みんなも私も大好きな東大雪のニペソツ山と同じような魅力があります。2014年見た白いニペソツ山の感動が今でも忘れられないので、今度は積雪期の利尻山も見てみたいです。
せっかく利尻島まで来て山頂に立てないのは残念ですが、天候が悪ければここで引き返すことも選択肢となります。でも、8合目の長官山まで登ってこの景色を眺めるだけも十分価値があります。
標高を下げて、第2見晴台からの展望。鴛泊港やペシ岬がかなり近くなりました。
下山時のこの付近でまだ5時台ならば、始発のフェリーの乗船時刻に十分間に合います。
結局、山頂から約3時間で下山完了。さらに北麓野営場から徒歩1時間程度で鴛泊港へ戻ることができました。これで始発の稚内行きのフェリーに間に合います。
鴛泊港から朝の利尻山の眺め。僅か数時間前にピークに立っていたと考えると感慨深くなりますよ。
利尻島を後にして稚内への短い船旅。始発便は混雑しがちです。
稚内から札幌への帰路の途中、サロベツ原野から見た利尻山。
バイクでの移動ではガソリン1リットルで40kmくらいの燃費なので、600kmを走行しても2,000円くらいで済んでしまいます。これにフェリー代とキャンプ場、お風呂代、残りは食費で1万円で大丈夫。
今回の行動と私の意見が反対になってしまい恐縮ですが、離島の魅力は長期滞在にあるのではないかと思います。20年以上前に訪れた式根島や神津島、波照間島や与那国島などで感じたように、島ならではの雰囲気は時間をかけて楽しみたいもの。ゆとりをもったスケジュールが組める場合は、ゆっくりと利尻島を訪れてみて下さいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※この記事は2016年6月12日の山行をもとに作成しました。