カンボジアのシェムリアップは、アンコールワットを始めとする遺跡群観光の拠点となる街で、ホテルや飲食、ナイトマーケットといった観光客相手のサービス業がとても栄えています。
アンコールの遺跡群は早朝から夕方まで観光客で賑わっており、日中は連日30℃を超える暑さとなるため、市街地は地元の人以外の姿がまばらになります。反対に、遺跡群から帰ってきた観光客で賑わうのは日が暮れてからの時間帯で、有名なパブストリートは欧米人や中国人、韓国人などで賑わいます。
この記事では、個人手配でシェムリアップを訪れる計画の方を対象に、シェムリアップ滞在の基本的な情報をお伝えしていきます。おススメのホテルや飲食店、ショッピングに関する情報は他のブログに譲りますが、一般的な内容については、大体のことを網羅しているかと思います。具体的には、
- アライバルビザとe-visaについて
- 米ドルと現地通貨の流通、物価について
- 空港でSIMカードを手配する方法
- 空港からトゥクトゥクを利用して市街地へ出る方法
- 自転車を借りるよりトゥクトゥクを利用するほうがいい理由
- ATMや市中での両替について
- 遺跡群の事前学習が必携な理由と観光ルートをアレンジした方がいい理由
- 遺跡観光に必要なチケット購入について
- シェムリアップで滞在するホテルの選び方の着意事項
- パブストリートでの夕食について考える
- プライオリティパスを利用できる空港ラウンジについて
これらの内容ついて書いていきます。現地調査日は2018年6月1日~3日です。
どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
アライバルビザとe-visaについて
日本のパスポートではビザ不要で入国できる国が多数ありますが、観光でカンボジアに入国する場合はツーリストビザが必要です。ビザの申請と入手方法にはいくつかあり、
- 現地の空港で申請して即時発行してもらう方法
- 事前に日本国内で発行してもらう方法
- ウェブサイトを通じてe-visaを発行してもらう方法
という3パターンが主な取得方法です。いろんなブログで推奨されているのは、現地の空港で申請して即時発行してもらうことなのですが、これにはメリットがあり、
- 費用が安い(2018年5月現在、30米ドル)
- 時間がかからない(申請用紙の記入と待ち時間のみ)
ということが主な理由のようです。実際のところ、フライト中に入国書類と一緒にアライバルビザ申請用紙が配布されますし、入国審査の手前にある専用カウンターには、多くの人が並んでいるのを確認することができます。しかも手続きが簡単です。
しかし私の意見としては、
- 事前に顔写真を用意していかなければならないこと(写真が無くても許してもらえたというレポートもありますし、5ドル追加で発給されるという情報もあります。しかし国境での審査というのは、いつどのようなことが起こるかわからないので、あくまでもルールに従うべきだと考えます)
- 申請する列に並んでいる時間がもったいない
- 日本で隙間時間に準備できることは事前に済ませておきたい
- 日本国内でクレジット決済ができる
- e-visaも申請してすぐに発給される
というような理由から、現地での申請よりもシステム処理料として6USドルが追加になったとしても、ウェブサイトからe-visaの申請をすることをおススメしたいと思います。
上記の5つの理由よりも、6ドル分の値引きのほうに魅力を感じる方は、現地での取得が都合が良いでしょう。
なお、e-VISAの申請は下記のリンクから進むことができます。
グーグルで「カンボジア ビザ」と検索をすると、申請代行業者の広告がトップに表示されます(2018年6月6日現在)。代行ではなくご自身で手続きされる場合は、
eVisa Kingdom of Cambodia (Official Government Website)
こちらをご参照ください。
※なお、カンボジアには数次ビザもあります。
米ドルと現地通貨の流通と物価、予算について
カンボジアでは米ドルが流通しており、現地通貨よりも米ドルが主流になっています。ですから事前に準備するのは米ドルのほうがよく、買い物や食事で現金決済した際に発生するお釣りくらいでしか、現地通貨を目にする機会はないと思います。要するに1ドル以下の端数分くらいなのです。
米ドルは出国前に両替する方がレートが良いことが多いので、空港で用意するか、現地のATMでキャッシングするのもいいと思います。
つぎに物価についてですが、基本的に現地の物価は安いと思います。しかし、観光客相手の場面では高めに設定されていることも多いので、バンコクやホーチミンなどに比べると割高なのは否めません。
例えば、トゥクトゥクの料金や、市内の飲食店やカフェ、遺跡群周辺での食事などは、5ドルから10ドルくらいは平気でかかりますので、先進国並みの価格設定と考えることもできます。
旅行先での出費は、外食と交通、ショッピングが主要なところですので、これらが高めに設定されていることを考慮するならば、バンコクやホーチミン、クアラルンプールなどよりも遥かに高額な出費となり、シンガポール並みの物価と考えたほうが無難かもしれません。
買い物をして米ドルで決済して初めて目にする現地通貨。そのくらい米ドルが一般的に流通しています。
空港でSIMカードを手配する方法
タイ同様にカンボジアもSIMは安めの設定となっているため、現地の空港で調達するほうがいいと思います。
私は香港で販売されているSIMカードを事前に準備して行きましたが、周辺各国を周遊するわけでもなければ、現地調達がベターでしょう。
空港のアライバルホールから外に出て、すぐ右側にいくつかショップが並んでいますので、通信会社や利用日数、価格と相談しながら自分に合ったものをチョイスすればいいでしょう。
ただし遺跡群では電波が通じない箇所も多く、そもそもスマホ自体をあまり利用しないと思いますので、ホテルでフリーWiFiが使えるのであれば不要かもしれません。
空港からトゥクトゥクで市街地へ出る方法
空港とシェムリアップ市街地との距離は、他の国際空港と比較してもかなり近い方なのですが、電車やバスがないためREMORK(通称:トゥクトゥク)の利用がメインになるかと思います。
ホテルを予約した際に空港送迎サービスが利用できる場合は、事前にリクエストを送っておくことで迎えにきてもらえます。しかし、お迎えの手配をしていない場合は、現地でトゥクトゥクのドライバーと交渉するか、カウンターで料金を支払って手配してもらうことになります。
空港から市街地までの相場は基本的に5ドルなのですが、これは空港の敷地外で待機しているフリーのトゥクトゥクを利用する場合の相場で、カウンターで料金を支払う場合は9ドルの定額となります。この価格は、アジア圏で国際空港から市街地への運賃としてはかなり高く、上海でリニアに乗るよりも高額です。ただしこの料金の一部は、ホームレスの支援や赤十字、子供たちの医療などに寄付されるということが明記されています。
トゥクトゥクのカウンターは、アライバルホールを出てすぐ左にあり、受付で「市街地へ行きたい」「ホテルへ行きたい」などと伝えればホテル名を訊かれますので、答えればたいてい理解してもらえます。
料金を支払うと領収書と遺跡群への案内用紙が発行され、担当するドライバーを紹介されますので、ドライバーの案内に従ってトゥクトゥクの駐車場まで同行します。ホテル名と住所を再度確認して乗車します。
乗車前に翌日の行動について必ず尋ねられる
他のブログや口コミでも散見されますが、乗車前に翌日からの遺跡観光案内を提案されます。アンコールワットとアンコールトムを含むスモールツアー1日が20ドルで設定されており、これに日の出を加えるとプラス5ドル、大回りコースやトンレサップ湖などアレンジする場合は交渉制となります。
実のところこの価格は、ホテルで手配する相場価格より5ドルくらい高めの設定になっていますが、彼らは「TOURIST TRANSPORT ASSOCIATION FOR SIEM REAP INTERNATIONAL AIRPORT」に所属しており、英語が流暢で、経験も豊かな訓練されたドライバーたちです。空港に出入りする場合はブルーのYシャツを着用しており、これが彼らの制服のようです。
実際に私もこのドライバーに翌日の観光案内をお願いしましたが、人柄も良くて水や食事への気配り、帰りのフライトへの送迎の心配、約束の時間より早くから待機してくれていたりと、大変満足いくサービスが得られました。そういった経験から言えば、ここでのドライバーが気に入れば、躊躇なく翌日からの行動もお願いした方がいいでしょう。
なお、翌日以降の料金はその場で支払いますが、時間通りに必ずホテルに迎えに来てくれますので心配要りません。
遺跡観光は自転車よりもトゥクトゥクを利用したほうがいい理由
遺跡観光をするうえで、自転車や電動バイクを利用することをおススメしている記事をよく見かけます。かく言う私も、現地で空港から出るまでそう考えていました。自衛官として10年近く勤めた経験と、現在でもマラソンや登山もするので体力には自信があり、自転車で40kmくらいなら楽勝だとあまく見ていました。
しかし実際は次の理由から、トゥクトゥクを利用することをおススメします。
- 未舗装の不整地が多いので実際より遠く感じ、時間もかかる
- 遺跡群の観光だけでも体力が必要なので、移動は努めて省力のほうが良い
- 街灯がないので早朝の移動は困難で、地理に明るくないので道に迷う可能性が高い
- 雨にやられる可能性がある
- 何と言っても暑い…
ちょっと想像してもらいたいのですが、例年猛暑日を記録する前橋市や甲府市で、1日中自転車を乗り回して公園巡りなんてしたら、楽しいどころかきっと苦行に近いと感じることでしょう。そのような体験をしたいのであれば自転車も選択肢に入れていいかもしれません。
いっぽうで僅か20ドルを支払えば、あなたのドライバーは1日中遺跡観光を付き合ってくれます。遺跡の中を見ている間、彼らは後部座席にハンモックをかけて休みながら、朝の5時前から1日中運転手として付き合ってくれるわけです。そう考えたなら、20ドルや30ドルは適正で価値ある出費だと私は考えます。
こちらはGreen e-bikeのお店。話のネタに利用してみるのも面白いかも。いずれにせよ、自転車も含めてこれらの乗り物の利用シーンは、
- スポット的な遺跡観光や博物館などへのショートトリップ
- 市街地全体やちょっと外れた場所へのツーリング
といった使い方がよいのではないかと思います。
トゥクトゥクのドライバーは写真撮影も快く応じてくれるでしょう。旅のいい思い出になりますよ。
ATMや市中での両替について
シェムリアップの市街地にはATMがたくさんあり、探すことなく必ず見つけることができます。ですからデビットカードかクレジットカードがあればキャッシングをすることができます。一方で両替所はそれより少ないようです。いずれにせよ前述の通り、現地で流通しているのは米ドルなので、よほど長期滞在する予定でもない限り、一般旅行者は事前に日本で準備していくか、乗り継ぎの空港で両替していくのが良いでしょう。
遺跡観光のチケット購入について
アンコールワットとその周辺の観光には、チケットの購入が必要になります。チケットには、
- 1日券(37ドル)
- 3日券(62ドル)
- 7日券(72ドル)
の3種類があり、その場で写真撮影をしてあなたの写真付きでチケットが発行されます。写真撮影は、入国審査と同じような感じで行われるので、ただカメラを見つめるだけでOK。すべて係員の指示に従えば問題ありません。
支払いは現金でもクレジットカードでもOKですが、ほとんどの人達が現金で支払っています。窓口が混雑するので、クレジットカードの決済はひと手間かかることから面倒くさいようです。できれば現金を用意していきましょう。ATMも多数設置されているので、列に並ぶ前に引き出しすることが可能です。
チケット売り場は、シェムリアップの市街地とアンコールワットとを結ぶ直線道路から東へ外れたところにあるため、ちょっと寄り道しなくてはなりません。こういった理由もあるため、トゥクトゥクをチャーターしての観光を強く勧めます。
出来上がったPASSはこのように写真と期限が記されています。
ちなみにPASSのクオリティは、家庭のプリンターで印刷したコピー用紙のような感じですので、ボロボロになってしまう可能性があります。それぞれの遺跡の入り口で提示を求められますので、首からぶら下げるカードホルダーがあると便利。多くのツアー客はそのようにしています。
遺跡群の事前学習が必携な理由と観光ルートをアレンジした方がいい理由
初めにアンコールワットを観たいと思ってシェムリアップ行きを計画し始めると思いますが、情報収集していくにつれて遺跡群がいかに広大な地域に点在し、バラエティに富んでいるかに気付くことでしょう。
「よほど遺跡が好きな人でもなければ飽きる」というようなことが口コミに書かれているのを見ますが、私もこれを否定しません。そこで、次のようなことを提案したいと思います。
- 事前に訪れたい遺跡について、名前と位置、所要時間を調べておく。遺跡観光に使える日数や行動時間、滞在する時間帯から旅程を見積もって、ルートを決める
- 一生のうち、何度かこの地を訪れることできるのであれば、次回の宿題として先送りする遺跡も決めておく
- 入場チケットの元手を取ろうと欲張らず、半日は遺跡観光、残りは博物館や市街地の散策などに充てて、飽きないような工夫をする
これをしておくことで、行き当たりばったりにならないでしょう。行き当たりばったりの旅はひとり旅では印象に残りますが、名所の観光シーンでは計画的かつ効率よく観光したほうがいいと思います。
シェムリアップで滞在するホテル選びの注意事項
シェムリアップにはホテルがたくさんあり過ぎて選択に悩むところですが、個人手配の一般旅行者にとってのポイントは何と言っても立地です。中心街に位置しており、食事も買い物も徒歩圏内で済ませられる立地こそが、滞在先のホテル選びで最も重要だと言えます。
いっぽう郊外には、大きなリゾートホテルがたくさんありますが、観光バスツアーで利用するようなホテルなので、一般旅行者にとっては不便に感じることでしょう。遺跡観光がメインで市街地には興味がない、という方にとってはそれでもいいかもしれませんが、個人手配での一般旅行者なら、中心街でホテルの予約すべきです。
パブストリートでの夕食について考える
パブストリート周辺は、欧米人が好みそうなオープンな雰囲気の飲食店が軒を連ねています。陽が暮れる時間になると遺跡観光から帰ってきた観光客で大変賑わい、どこのお店も混雑します。多くの店がハッピーアワーを設定しており、生ビール1杯が1ドルとか0.5ドルで提供されているため、どこのテーブルでもビールのジョッキが並んでいるのを見かけられることでしょう。
ただし、フードメニューの価格帯は高めで、最低でも5ドル以上に設定されています。徒歩圏内でやや外れた立地の地元の飲食店では1食1ドル~2ドルが相場なので、いかにパブストリートのフードメニューが高いかがわかるでしょう。それでも先進国の飲食店に比べれば平均かやや安めですので、現地の物価と比較して考えるタイプの方でなければ、雰囲気を楽しむことも含めてパブストリートの利用をおススメします。
LCCが普及して海外旅行を格安で済ませたいというニーズに関しては私も十分理解できます。しかし、現地の商売人はツーリストに対して多くを消費して欲しいと願っているはずです。これは外国人旅行者を多く受け入れ、インバウンド景気で盛り上がる私たち日本だって同じこと。
いま、東南アジアでは日本人よりも中国人や韓国人観光客が多く目立つようになりました。現地の方々にとっては、ツーリストの振る舞いによってその国の人々へのイメージを抱くいっぽうで、お金の使いっぷりも同じくらい重要だと考えられます。日本人がケチな国民だと思われないように、そこそこのお金を現地で落としていくことも考える必要があるのではないでしょうか。
スーパーで缶ビールを購入しても1ドル前後と安いのですが、ジョッキで飲んだほうが0.5ドルと安いので、ビール好きには嬉しいところ。
プライオリティパスを利用できるラウンジについて
シェムリアップ国際空港は簡素で非常に小さな地方空港ですが、この空港にもプライオリティパスを利用できるPLAZA PREMIUM LOUNGEがあります。香港やクアラルンプールなどでおなじみのラウンジですが、シェムリアップのラウンジはかなり広めの設計で、天井も高く落ち着く雰囲気です。主な設備は次の通りです。
- オーダーして作りたてのお料理を食べることができる
- アルコールは注文して提供してもらう
- シャワーの利用はスタッフにお声掛けをしてアメニティを提供してもらう
- 充電するための電源は豊富にある
ラウンジの場所は、イミグレーションを出てX線検査器を通り、免税店を抜けると右側に進みます。左手に1番搭乗口がありますが、そのまま突き当りまで進むとラウンジがあり、左がカンタス航空のラウンジ、右がPLAZA PREMIUM LOUNGEとなります。
なおシェムリアップ空港は、搭乗手続きのカウンターが少ないので、早くからカウンターがオープンすることはありません。また、自動チェックイン機もないので、3時間以上前から空港入りしても出国手続きを済ませることはできないでしょう。
ですから、ラウンジで長居することはないでしょうし、そもそもターミナル内で長時間過ごすこともないかと思います。