今日の話題は下ホロカメットク山。
富良野岳からオプタテシケ山へと続く縦走路から離れた支稜線上に、円錐形のたいへん美しい山があり、その名を下ホロカメットク山といいます。
私は「北海道で最も美しい」と過大評価(?)をしていますが、標高が1,668mと主稜線の山々より若干低いうえ、周囲の山々のほうが有名なので、かなりマイナーな存在にとどまっています。
この山には縦走路も登山道もありません。十勝側の人里から奥深いところに位置していることもあってか、訪れる人はとても少ないのが現状。書籍やウェブ上でも情報が不足しています。そもそもニーズがないのでしょう。
そこでこの記事では、下ホロカメットク山に登ってみたいと考えている方に向けて発信。
天候が安定し昼間時間が長い残雪期に日帰りすることを想定し、アクセス経路を中心にご案内していきます。
下ホロカメットク山、登山開始地点までのアクセス
出典「登山等に関する通行規制等について」
十勝西部森林管理署 東大雪支署(新得町)のPDFデータを引用して加工
では、さっそくご案内していきましょう。
新得町の屈足地区からトムラウシ山登山口がある東大雪荘へと延びる道道718号線を北上し、曙橋を渡った北側から左折して「シートカチ支線林道」へ入ります。この林道は十勝岳の新得コース登山口へと続きますが、2018年4月現在被災しており、途中から「トノカリ林道」を経由し、大きく迂回する形で十勝岳登山口へアクセスすることになります。
最新情報は北海道森林管理局「登山等に関する通行規制等について」をご確認ください。
余談になりますが、4月下旬以降、林道の雪解けと下ホロカメットク山の雪の残り具合が上手くマッチすれば、「トノカリ林道」を車両で進んで奥深くまでアクセスすることも可能かもしれません。でも「トノカリ林道」は、標高の高いところを通過するので、そう上手くいく話だとは思えません。
道道718号線「曙橋」から撮影。右折するとヌプントムラウシ温泉や沼ノ原登山口へと通じる「ヌプントムラウシ林道」へ続きますが、こちらも大規模災害により復旧の見込みはありません。
「シートカチ支線林道」はよく整備されていて走りやすい林道ですが、「殿狩橋」を越えてからしばらくすると、被災地点が突然現れるので要注意。まだ明け方の暗い時間帯でそこそこのスピードが出ていたら、急ブレーキをかけても間に合わずに川に真っ逆さまです。想像するだけで怖ろしいです、、、
車両は被災地点より数百メートル手前の分岐付近に駐車するのがベター。
被災箇所付近では転回するスペースがないので、深夜に同乗者の下車誘導もなく、ブレーキランプだけでここまで戻るのはかなり緊張します。素直にここからスタートしましょう。
シートカチ支線林道から登山開始点を目指して
被災地点にはロープが設置され、徒歩で通行できるくらいの刈り分け道がありました。川からかなり高捲きになっていますので、慎重に通過したいところ。かなりの高度感に緊張します。滑落したら恐らくあの世行き。
林道をしばらく歩くと、秘奥の滝がある「レイクサベツ林道」の入り口があります。
ここには十勝岳登山口への案内表示がありますが、残念ながらこちらも被災しているとのこと。北海道夏山ガイドで紹介されている、さらに南の「シートカチ第5支線林道」も被災しているそうです。いずれにせよ、「シートカチ支線林道」が「殿狩橋」の先で大規模に被災しているのが致命的であり、復旧は難しいでしょう。
林道歩きもそろそろ飽きてきたころ、「シートカチ第6支線林道」の看板と正面に「パンケニコロベツ林道」の解放されたゲートがあります。ここまでおよそ2時間。このT字路から右折して「シートカチ第6支線林道」に入り、取り付き地点を目指します。ここまでの間にも被災箇所がいくつかありますので、特に帰路のスキー滑走は慎重に。
ちなみに、「パンケニコロベツ林道」は、かつてオフロードバイクでかっ飛ぶことが出来ましたが、現在の状況は不明。
「シートカチ第5支線林道」との分岐を過ぎ、2万5千図の十勝川に架かる橋(標高点・716)を過ぎて林道が屈曲する付近から下ホロカメットク山が見えてきます。
私が訪れた2018年4月28日は、深夜の暗闇の中での出発だったため、「シートカチ第6支線林道」に入って夜が明けてから、やっと下ホロカメットク山がハッキリと確認できるようになりました。
朝2時に出発したのは、雪が締まっている深夜のほうがツボ足で歩きやすいから。
この付近から見上げると、いったい何時間かかるのかと気分が滅入ってしまいますが、取り付き地点との比高は700m程度なので、単純に2~3時間くらいで登ることができるだろうと予想できます。
途中からは朝日を浴びる下ホロカメットク山と、境山へと続く稜線の一番手前にある標高点・1656ピークの姿。
シートカチ第6支線林道から下ホロカメットク山へ取り付く
地理院地図「地理院タイル」を一部加工して使用
駐車地点から約3時間ほど歩き、「シートカチ第6支線林道」が北に向かって屈曲部する付近へ到着したら、いよいよ尾根に取り付きます。北東の顕著な尾根を目指しますが、下部は樹木が発達して見通しが悪いので、GPSで確認しながら歩かないと分からないかもしれません。
いずれにせよ下ホロカメットク山は、直登すればどこからでも山頂へ到達できる感じ。
かなり多くの入山者がいるようで、あちらこちらにスキーの滑走跡が見られますが、マーキングは一切ゼロ。GPSかコンパスを切って、時折見せる山頂を目指します。
樹林帯をちょっと歩くと、いきなり傾斜変換のポイントが現れます。これが本当に顕著なので、思わず笑ってしまうほど。札幌のモエレ山みたいです。
最初の標高差300mは斜度30度、残りの300mは斜度45度、実際にはそんなにないでしょうが、ざっくりとそんなイメージを持って直登していきます。下部がザラメであればツボ足のまま山頂へ行けるかもしれませんが、下部の段階で雪が締まっていれば上部では確実にアイゼンを要します。なので、無理にキックステップで登るのではなく、最初からアイゼンを履いて登った方が早いです。
森林限界を超えてからの急斜面でアイゼンに換装するのは面倒です。
森林限界も突然やって来ます。地形が単純なのでどこから登っても同じ標高で森林限界となります。
上部にはハイマツがたくさん見え、あの付近が山頂かと思って期待しますが、実際の山頂はもっとに奥があるので見えません。
何の変わり映えもない単純な斜面を直登。みるみる高度が上がっていきます。
シーズンを通じて風が強いためでしょうか、雪があまり付かずにハイマツの露出が多くなりますが、雪が固く締まっていれば踏み抜くこともなく山頂まで到達できます。
遠くから見るとキレイな円錐形ですが、山頂部にかけて稜線らしき地形になっており、北側には雪庇が出来ています。
あそこが山頂。かろうじて雪が残っている程度。もしも1週遅ければ、藪漕ぎ必須でしょう。
遮るものは一切なく、「360度の展望」という言葉はまさにこの山のためにあると言っても過言ではない感じ。
達成感!下ホロカメットク山から360度の展望
雪に埋もれた一等三角点と遠くに十勝連峰の眺め。トムラウシ山も十勝連峰の1つのピークのように見えますよね。
さらに右に目を転じて東側を眺めると、ニペソツ山や丸山といった東大雪の山々が。
こうして眺めてみると、三峰山と呼ばれる所以がよくわかります。麓に広がるのは高層湿原の原始ヶ原。
紅葉の時期に下ホロカメットク山の頂に立てれば、きっと素晴らしい眺めが楽しめそう。でも、沢もない山なので手強い藪漕ぎが予想されます。
こちらは大麓山とトウヤウスベ山。原始ヶ原の南、富良野市と南富良野町を分け隔てる稜線です。
帰りも来た道を戻ります。長い林道歩きさえ気にならなければ、日帰りも十分可能な下ホロカメットク山。
ほとんど人が入らない山ですので、警察への登山届を忘れずに提出して家族にも伝えるとともに、ケガをしないように余裕を持った時間計画を心がけましょう。