こんにちは!コモ子@やまたび北海道(@ComocoHk)です。
今日の話題は知床連山。縦走路を日帰りで往復してみた経験をもとに、概要をご紹介します。
知床連山の縦走路は、表大雪の北海岳からトムラウシ山の区間、十勝連峰の富良野岳からオプタテシケ山の区間と並んで北海道屈指の人気の縦走コースです。
誰もが一度は歩いてみたいと思いながらも、なかなか実現できないのではないでしょうか?その理由として挙げられるのは、
- ヒグマとの遭遇率が高いと言われている。
- 環境や野生動植物への配慮から、テント泊があまり推奨されていない。
- 北海道の端という地理的特性から、北見地方や網走地方あたりに在住していなければ、日帰り圏内として難しい。
- 知床林道のマイカー規制がある。
といったことが考えられます。
私も2011年と2014年、それぞれ秋にチャレンジしていますが、2011年はオッカバケ岳で時間切れと判断。2014年は羅臼平でガスが晴れず敗退しています。
この記事では、長い休暇を取らずに知床連山を縦走してみたいと考えている方に向けて、
- 日帰りかつ往復で縦走することはできるか?
- 札幌から週末2日間の休日で往復縦走することはできるか?
という疑問を解決すべく実際にやってみました。
深夜に札幌からウトロまで400㎞を移動する
知床連山は主峰羅臼岳から知床硫黄山付近まで続く山々の総称で、深田久弥氏の日本百名山(新潮文庫)にも紹介されています。
札幌から知床半島へ遠征する場合、仕事を3日間休むことさえ出来れば2日間を縦走にあてることが可能です。
これを週末の2日間で何とかならないだろうか?というところから、知床連山日帰り縦走計画を立ててみました。この計画の大変なところは札幌から片道400kmの移動なのですが、公共交通機関を利用することで解決への糸口が見えてきそうです。
陸路を使って札幌から知床まで楽に移動をする手段は、中央バスのイーグルライナーという深夜バスを利用すること。平日の仕事が終わったあとにバスに乗れば、札幌からウトロまで寝ながら移動することができるからです。
ところがこのバスはウトロ止まりなので、登山口までの移動手段を確保しなければなりません。仮にウトロの市街地からタクシーで移動しても、登山口到着は7時を過ぎているでしょう。それでは行動開始がちょっと遅いのです。
そこで私は先週のトムラウシ山の帰りにバイクを旭川にデポしておき、札幌→旭川間のみバスで移動することにしました。もちろん札幌からスタートしても構わないのですが、少しだけ仮眠を取ることができます。
〇先週のトムラウシ山
【トムラウシ山|日本百名山】天人峡から日帰りできるか?このコースをおススメする理由とは?
札幌から旭川まで約2時間のバス移動ですが、予約が不要で片道の最安値が1,600円程度(回数券のバラ売りで購入する)とたいへんお得です。この2時間で仮眠をとれば完全徹夜にはならないので気持ちが楽になります。
金曜の退勤後20時に札幌駅発の高速あさひかわ号に乗車。22時過ぎに旭川に到着。バイクを回収して旭川市を出発しウトロを目指します。これだと順調にいけば登山口到着が3時40分頃となります。ちょうど日の出の時間帯です。
快晴の場合、登山口到着前に知床連山が一望できます。岩尾別温泉への案内看板が見えたら右折します。イワウベツ川沿いの道に入ります。
この段階で知床連山が雲の中であれば縦走は面白くないかもしれません。過去6月下旬から9月上旬の間に知床連山と十勝連峰、大雪山系の高根が原、このいずれも天気予報が「晴れ」の日中にガスがかかると 、ずっと視界が開けずに黙々とガスの中を歩き続ける経験をしています。
〇羅臼町側からのライブカメラ映像が公開されています。
登山に役立つライブカメラリンク集|北海道の山に登る前に現地の天気を事前にチェック!
さて、この分岐地点から急にエゾシカの群れが現れることがあります。川に近いため特に早朝や夕方は要注意。過去には川を渡渉したところにある斜面で、ヒグマを目撃したこともあります。
※音が出ます。ご注意ください。
木下小屋から羅臼平を目指して
私が登った7月は3時台からすでに明るいので、出来るだけ早く出発したいところ。早朝の時間帯はヒグマの活動時間であることを念頭に入れておきますが、大沢までの登山道はとてもよく整備されているので、まだ薄暗い時間帯にヘッドランプの明かりを頼りにするだけでも問題ないでしょう。
緩やかに標高を上げる登山道からは知床半島の名山が見えます。知西別岳は積雪期に知床横断道路から羅臼湖を経て山頂へ至るルートが一般的。私もまだ登ったことがありませんが、詳細は「北海道雪山ガイド(北海道メーリングリスト編)北海道新聞社」にて紹介されていますので、そちらをご覧ください。
林間の中を進む登山道を弥三吉水、極楽平を経て銀冷水まで登ると、立派な携帯トイレのブースが設置されいます。
このあと大沢へ出ると周囲が開けてきますので、携帯トイレを使用するにはここが最適。以前に比べて環境への配慮がますます進んでいるようですね。
7月上旬の大沢。雪はほとんど残っていませんでした。ここからお花畑のなかの歩行。でも岩場やガレ場が中心になるので、脇見をして転ばないように注意したいですね。
環境保護のためでしょうか。ロープが張られているところでは、道からを外れないように配慮しましょう。補修がかなり進められています。
大沢はお花が満開。エゾノツガザクラでしょうか。
当サイトおススメのガイド本「北海道夏山ガイド<6>道北・道東・増毛の山々」では登山コース全体について詳しく解説されていますが、道中のどこにどんなお花が咲いているかを知るには、山と高原地図が便利。コースタイムと合わせて活用したいところ。
満開のチングルマに囲まれて、早朝からテンションが上がること間違いなし。
こちらはエゾコザクラでしょうか。大沢は両脇がずっとお花畑になっていて、ついつい足を止めてしまいがち。でもここを抜けるとまもなく羅臼平に到着します。
大沢を上部まで詰めてハイマツのトンネルを抜けると羅臼平。右手には朝日を浴びる羅臼岳が迫ります。知床連山を一方通行で硫黄山からカムイワッカへ下りるのであれば、先に羅臼岳へ登ります。でも日帰りで往復するなら優先は縦走路。最後に時間が余ったときに登るようにしたほうが無難です。今回の私もそうでした。
左手には三ツ峰を見上げます。羅臼平にはテントを張ることができます。
縦走路の中にはいくつかキャンプ指定地がありますが、1泊で縦走するのであれば、羅臼平が最も利便性が良いと思います。その理由として、
- やや遅めに木下小屋を出発しても、初日の行動時間を短くすることができ、長時間身体を休めることができる。
- テントをデポしておけば、翌日は涼しい早朝から軽々と歩き始めることができる。
- 上部が晴れていれば両脇に雲海を見ながら歩ける可能性があり、お昼過ぎには下山が可能
といったところです。
いずれにせよ羅臼平は休憩適地なので、ここで一休みしてから縦走路へ向かいましょう。
羅臼平から、知床連山の縦走路へ
羅臼平から縦走路に入るとこれまでの登山道とはかなり状況が変わります。まずいきなりハイマツ帯。それとザレの急斜面。
靴のソールパターンによっては滑りやすいので注意が必要です。トレランシューズを愛用しているとよく分かるのですが、シーズン中に新品に交換するとグリップ力がまるで違うことに気付きます。靴だけはケチらずに更新サイクルを早くした方が良いというのが持論。
さて三ツ峰への登り。山腹にはあちらこちらにお花畑があるので、気持ちが弾むことでしょう。
縦走路は三ツ峰の鞍部を通過します。ここもピークを踏まずに越えていきましょう。
振り返ると羅臼岳の姿。上部は大きな岩の集合体ですが、下部はハイマツの緑に覆われて、羅臼平や登山道も見えますね。
縦走路の前方には、次の目的地であるサシルイ岳が見えてきます。三ッ峰と同様、縦走路はそれぞれのピークを踏まないように通過しますが、もちろん三ッ峰へは登ることもできます。
次のサシルイ岳へのコルまではまとまった残雪があり、コルにはテン場があります。私が訪れた7月上旬は、まだまだ水を採ることができました。
三ッ峰のテン場。この縦走路の途上で最も景観がいいテン場だと思います。ただし、天候が崩れて引き返す場合でも三ッ峰に登り返す必要が生じるので、あまりおすすめできないかも。
サシルイ岳は、縦走路の底部からの比高差が大きく、三ッ峰側と次のオッカバケ岳側のどちらから登っても約200mの獲得標高があります。
そのため見渡す景色が美しく、縦走路最高の展望台と言っていいでしょう。
私がこれまで登ったなかで印象に残っている展望の山は、
- 十勝連峰の美瑛岳
- 表大雪の化雲岳と白雲岳
- 増毛山地の群別岳と浜益岳
- 日高山脈の十勝幌尻岳と北トツタベツ岳
このあたりです。
いずれも快晴の日に何度でも登りたい山です。
サシルイ岳まで登りきると、手前に見えるのがオッカバケ岳。奥に見えるのが、知床硫黄山の山塊です。
直線距離で約4kmですが、まるで遥か彼方にあるかのように遠く見えます。知床連山の縦走は登り返しが多くて大変なので、最も眺めが良いサシルイ岳で引き返すという選択肢も悪くありません。
三ッ峰と羅臼岳、両脇に海岸線という美しい眺め。当ブログではこのサシルイ岳がイチ押しです。
ちなみに三ッ峰の最高峰は、羅臼町側のポコの上にあります。
オッカバケ岳、二つ沼、南岳を越えて知円別岳へ
サシルイ岳を越えると縦走路の中で最も大きな雪渓があり、この雪渓を上部の先端から下部の先端付近まで下ります。
サシルイ岳を下りきったところの登山道は、雪渓からの雪解け水で川になっており、両脇が灌木のトンネルになっているため逃げられず、水濡れ必至です。
何とか頑張って少ししか靴を濡らさないようにしてオッカバケ岳とのコルへ出て、進行方向を大きく変えて沼に出ます。ハイマツ帯をオッカバケ岳のピークに向けて登ります。上の画像はオッカバケ岳の山腹からサシルイ岳方向を振り返った様子。
オッカバケ岳からは眼下に二ッ池を見下ろし、硫黄山周辺の荒々しい景観が間近に見渡せます。ここから南岳までの間がこの縦走路で最も手を焼く部分の一つ。ハイマツと岩のミックスに手こずり約40分を要します。雪が残るとかなり楽になるそうです。
南岳付近はガレ場になっており、いよいよ硫黄山の山塊が近くなってきていることを実感できます。でも意外と遠いんですよ、硫黄山。
知円別分岐までの間は、外輪山の稜線を外れて東側の山腹を進むようにコース取りされています。とても歩きやすい地形ですが、ヒグマも好きそうなのでよく見渡してから一気に通過したいところ。
知円別分岐手前にはお花畑。緩やかに登り切ったところが知円別分岐です。
知円別分岐から一気に変わる周囲の眺め
知円別分岐からは周囲の風景が一変します。ザレて荒涼とした稜線を慎重に通過して一番奥にある硫黄山のピークを目指します。雰囲気はまるで大雪山系の愛別岳のような感じ。
ザレた稜線を過ぎると今度はアップダウン。ここの登りと下りが激しく、この縦走路のハイライトにふさわしい場面。
この付近で見られるお花は固有種のシレトコスミレやコマクサ、イワウメなど。大沢や三ッ峰周辺とは土壌が異なるため、咲いているお花の種類も異なります。
そしていよいよ目の前には硫黄山。急登に加えて足場は不安定。疲れていますが慎重に三点を確保しながら登ります。
緊張しながら登り詰めると目的地の知床硫黄山に到着。縦走路を制して感無量。登山口の木下小屋から約7時間30分を要しました。
ここからの眺めは素晴らしいものがあります。
まずはこちら。知床連山と言うと、登山対象の羅臼岳から知床硫黄山までを指すことが多いのですが、硫黄山から眺めてみると海別岳や斜里岳まで一列に繋がっていることがわかります。斜里岳は直線距離で54kmも離れていますが、このように見渡すことができます。
こちらは知床岳。右奥には国後島のルルイ岳らしき山も見えます。
地図を見るとわかりますが、北方四島から北に延びるクリル列島、その先にあるカムチャッカ半島と多くの島々と火山が続いています。知床半島もその一部だと考えると、とても興味深いですよね。特にカムチャッカ半島には、日本人にもよく登られているアバチャ山や鋭鋒のコリャーク山など、カムチャッカ富士と呼ばれる美しい山々がたくさんあります。
さて、登山口から約7時間30分。羅臼平からちょうど5時間。同じペースで帰れば日が暮れるまでには岩尾別温泉に戻ることができそうです。
硫黄山から下山して知床林道を歩くという選択肢もありますが、岩尾別温泉まで道路を歩くと20kmは見積もらないとなりません。他の登山者やカムイワッカの観光客の車に便乗させてもらうことも出来るでしょうが、確実ではありません。知床林道のマイカー規制中であればバスに乗ることも選択肢になりますが、こちらは時間が合うかどうか難しいところです。
知床硫黄山から縦走路を往復して木下小屋へ戻る
さて復路に突入です。山中でテント泊をしようが日帰りだろうが通常はワンウェイですが、当ブログでは往復をします。
まずは硫黄山の下り。急な岩場を慎重に下った後はザレの斜面を下ります。縦走路への分岐点を見失って下り過ぎてしまいがちですので、注意が必要です。
再び急なアップダウンを乗り越え、知円別分岐までのザレの危険個所をクリアすると、あとはひたすら縦走路のアップダウンを繰り返していきます。この行程は往復で30kmくらいあり、直射日光を遮る箇所が少ないので水を消費しがちです。
9月中旬以降の涼しい時期を狙うのもありでしょうが、道中でまったく水が採れないのはちょっと不安ですし、日中の時間が短いのがネック。ヒグマの生息域でなければナイトハイクでも構わないのですが、知床連山では夜間行動は控えたいですよね。
南岳、オッカバケ岳を越えるとサシルイ岳への登り。
サシルイ岳の北斜面にある雪渓から流れ出る大量の水は、お昼を過ぎると登山道に溢れます。まるで小川の中を歩いているかのよう。靴を濡らす可能性がかなり高まります。
硫黄山から羅臼岳方面への縦走で、最大の難所とも言えるサシルイ岳の雪渓。残雪の下りは快適ですが、登りは足を取られて苦戦しがち。雪渓の出口をしっかりマークして、無駄なく一直線で登ります。
サシルイ岳を登りきると、羅臼岳がかなり近くなってきます。知床硫黄山から約4時間。木下小屋から約11時間30分。すでに16時を過ぎようとしています。
でも夕方の景色もいいですね。
この日は行きも帰りもほぼ同じ時間で縦走を完了。羅臼平へ到着したのが17時頃。これから羅臼岳に登ると日没までに下山できないので、諦めてそのまま木下小屋へ下山します。
登山は無理をしないのがポイント。時間や身体と対話をしてダメだと思ったら諦める。これ、とっても大事だと思うんです。
木下小屋へは19時ちょうどに下山完了。そのままバイクで移動。
ウトロにはキャンプ場があります。近所には「ウトロ温泉夕陽台の湯」という日帰り入浴専用の温泉があり、6月から10月まで営業しています。その奥には国設知床野営場があるので便利。さらにコンビニもあるので、お弁当やビールを買って簡素にテント泊というのもありでしょう。道の駅でテントを張るのは禁止されていますので、車中泊の方以外はこちらの利用をおすすめします。
もちろん飲食店や観光ホテルもたくさんありますので、下山後にしっかり宿泊するのが理想。私は翌朝4時30分には出発し旭川には9時30分到着。再び高速バス利用で正午には札幌に帰ることができました。
羅臼岳には道外から訪れる方も多いかと思いますが、この記事を読んで縦走路の魅力が伝われば嬉しいです。ぜひサシルイ岳まででも良いので足を延ばしてみて欲しいです。
北海道夏山ガイド⑥(北海道新聞社)には、縦走路について、キャンプ指定地、コースタイムなど詳しくガイドされています。同ガイド本には、北海道百名山の雌阿寒岳と雄阿寒岳、斜里岳、利尻山もガイドされているので、道外から百名山を目指している方には重宝する一冊になります。併せてご紹介します。
【利尻山】6月、ナイトハイクでご来光を眺めて、始発のフェリーで稚内へ帰る方法|札幌発着1泊2日1万円に挑戦
北海道内百名山概要【道東・道北】利尻山・斜里岳・羅臼岳・雌阿寒岳など