12月下旬の北海道十勝岳登山(望岳台)|視界不良で敗退した記録

十勝岳

 

 

今日の話題は十勝岳

 

望岳台への道路が冬季通行止めになる直前、12月20日に訪れたときのお話です。

 

入山してしばらくの間は雲一つないような天候でしたが、上部でいきなりガスに巻かれて視界が全くきかず、ホワイトアウトの中での撤退となりました。 

 

深夜2時過ぎに札幌出発。道央自動車道を走り、旭川経由で望岳台へ

 

十勝岳は十勝連峰の最高峰。

 

深田久弥の日本百名山で知られているため、全国的に知名度が高い山ですが、さすがに厳冬期に登る人は多くありません。

 

道内在住者でも前十勝より下部でスキーを楽しむくらいで、この時期にわざわざ山頂まで行く人は少数派。 

 

今回はクリスマス直前ということもあって、2016年最後の山歩きのつもりで出かけました。

  • 天気は晴れ予報、天気図を見ても風がないことが容易にわかるような気圧配置
  • 前日まで数日間降雪も無く、日本海側でも天気が良さそう
  • 火曜日なので、日曜入山者のトレースが残っていることが期待できる

などなど好条件ばかり。

 

フロントガラス

 

 前日の20時に、いつものニコニコレンタカーさんで借りた車はハスラー。

 

JR白石駅から近いコインパーキングに6時間くらい駐車しておいたら、フロントガラスはガッチガチ。

 

気温はマイナス11度と寒い朝で、フロントガラスの氷が解けるまでちょっとイライラ。

 

思えばそういう気分が不幸を呼んだのかも知れません。

 

朝は機嫌良くしろってオヤジの小言にあるじゃないですか

 

札幌からの十勝連峰への移動は、夏なら三笠経由で富良野へ抜けるのですが、冬は道央自動車道を利用して旭川経由で入ります。 

 

望岳台 冬

 

札幌を深夜2時40分に出発して、5時30分に望岳台へ到着。

 

今回は白金温泉側から入ります。 

 

リニューアルされた望岳台のレストハウス

美瑛岳と美瑛富士

 

望岳台には車が1台だけ停まっており、中で出発準備をしているのか、車内が明るく人が乗っている様子。

 

薄暗いながらも真っ白な美瑛岳、その奥には美瑛富士の姿がきれいです。  

 

望岳台

 

望岳台はレストハウスが新しくリニューアルされていて、

  • デパート並みの水洗トイレ完備
  • 暖房入りの休憩スペース完備
  • 自販機完備

まるでスキー場のロッジみたいです。

 

 

誰もいない暖かいレストハウスの中で靴を履いたり、スパッツを付けたりして、外が少しだけ明るくなるのを待ちます。

 

メールで北海道警察に登山届を提出していますが、念のためここの入口でも記入します。

 

まだ薄暗い中、噴煙を目印にスノーシューで出発

十勝岳

 

 山腹にはヘッドライトの明かりが数個ほどチラチラ見えるので、どうやら暗いうちに出発した先行パーティがいるようす。

 

望岳台には先ほどのクルマが1台しかなかったので、吹上温泉から登ってきたパーティかもしれません。

 

外はまだまだ薄暗いものの、とりあえず噴煙が見える方向へ歩き始めます。

 

避難小屋に着くころには明るくなるから大丈夫。

 

時間は6時10分くらいです。

 

モルゲンロートの富良野岳と表大雪が美しい

大雪山

 

表大雪に朝日が当たり始め、いよいよモルゲンロートの始まり。

 

望岳台からの登山道は、周囲に樹木が無いので遠くの山まで見渡せるんですよね。

 

富良野岳

 

こちらは通いなれた富良野岳

 

こんなに真っ白になった時期に訪れたのは初めて。

 

日本には四季があることが魅力なんですよね。

 

現代人はそういうこと忘れてはいないだろうか?ってたまに感じます。

 

そういうことを感じとる感性を、どこかに置いてきてしまってはいないだろうか?と自問する機会を与えてくれるのです。

 

最近、インバウンドっていう言葉をよく聞きます。

 

日本人は、おもてなし文化やクオリティを目当てにして、海外から旅行者がやって来ると錯覚しているようですが、どうやら実際は違うようです。

 

日本の四季と自然と歴史や文化、それと物価が安いことを目的に遊びに来ているのではないかと私は感じています。

 

 

十勝岳避難小屋

 

さて、カメラを何度も出したりしまったりしながらノロノロ歩き、1時間10分で避難小屋に到着。

 

トレースバッチリで雪も締まっているので、ほぼノーラッセルでした。

 

十勝岳避難小屋から夏道をゆく

十勝岳の登山道から十勝岳避難小屋

 

先行パーティはここからラッセルをして谷地形を進んでいったようですが、私は左側の尾根に乗って夏道をトレース。

 

中腹に見えていた先行パーティは、最終的に5人組であることがわかりました。

 

十勝岳

 

ラッセルもなく、スノーシューのまま夏尾根をガシガシ登っていきます。

 

ここがこのルートでメインとなるところ。

 

さっきまで雲一つない天気でしたが、だんだんガスがかかってきて怪しい雰囲気になってきました。

 

62-H火口からの噴煙が北東向きに流れているため視界が悪く、危うくスリバチ火口縁までダイレクトに詰めるとこでした。

 

先行パーティ

 

過去の記憶を頼りにトラバース気味に捲いていくと、先行グループが・1821付近に見えました。 

 

鋸山

 

この時点では正面に鋸山が見えましたが、一気にガスがかかり始め、ちょっと焦りはじめてきます。

 

上部で悪天候になっても、この付近まで戻れば大丈夫だろうと思い、先行グループに続いて山頂を目指すことに。

 

美瑛岳

 

美瑛岳が見えていると、帰路に間違って・1821から下りていくことはないでしょうが、視界が悪いとそうとも言えません。

 

ここを間違って下りてしまったら、ポンピ沢勝瑛の滝方向に下ってしまうことも。

 

そんなことはあり得ないと思うようなことも、冷静さを失うと起こり得るのです。

 

上富良野

 

後ろを振り返ると低い雲がどんどん近づいて来るのがわかります。

 

今回最大の失敗は、この時点で引き返す判断をためらったこと。

 

真っ白!一気にホワイトアウト!怖い

ホワイトアウト

 

先行パーティにもう少しで追いつく頃には、すでに辺りは真っ白に。

 

しだいに小雪も舞ってきました。

 

それでも先行パーティは進み続けている様子。

 

私は標識のようなものがあるところで少し考えてみましたが、こんなところで停滞すれば危ないので引き返すことに。

 

十勝岳

 

コンパスと地図で何とか前進方向を捉えていましたが、スリバチ火口のトラバース部分がどのくらいの距離があって、どのから尾根の頭に入るのかがイマイチわからず困りました。

 

夏と違って、歩測でどのくらいの距離を進んだのか把握しずらいもの。

 

一応、ipadを持っていたのですが、寒さで電源が落ちてしまい、GPSのログも確認できず。

 

通いなれた山でも、冬は専用のGPSが必須なんですよね。

 

かなり下ったところでやっと視界が開けてきて、避難小屋が見えた時はもう安堵感でいっぱい。 

 

十勝岳避難小屋

 

視界不良でとにかく下山することに無我夢中。

 

写真を撮ることなど全く忘れていました。

 

十勝岳避難小屋に着いたらもう安心。

 

ここでちょっと休憩、冷静さを取り戻します。 

 

TUBBS FLEX TRKは優れもの

TUBBS FLEX TRK

 

結局、ガスに巻かれて山頂までは行けなかったものの、10時20分に無事下山完了。

 

GPSはもちろんですが、いざという時にアナログの地図とコンパスが頼りになることを痛感しました。

 

さて、今回の乗り物は、秀岳荘さんのセールで購入したTUBUSFLEX-TRK

 

初投入でしたが、バックルの操作以外はとても使いやすいと思います。

 

価格帯も良心的なんですよ。

 

ブラックダイアモンドエクスペディションも2代目。

 

使い慣れた道具は裏切りませんね。

 

望岳台

 

望岳台の施設は12月30日で冬季閉鎖とのこと。

 

今日が2016年の登り収めになりました。

 

最近の山歩きでは、途中で引き返す場面が多くなってきた感じ。

  • メンタルの部分が弱くなって、最後までやり通すという闘志のようなものが薄れてきた
  • 成長して気持ちに余裕が出来たと考えることもでき、柔軟に判断できるようになった

この両方の見方をすることができます。

 

いずれにせよ、40代になってからの体力の衰えは日々感じています。

 

今でもほぼ毎日通勤ランニングをしているから気付くのですが、こうした体や心の変化を感じ取るのは大切なこと。

 

一度に心と体の両方を疲れさせてはならないとよく聞くのですが、山ではこういうことが頻繁に起こりうるんですよね。

 

不安を感じたり、気分が乗らなかったりしたときは、積極的に撤退するという選択肢を受け入れ、安全で楽しい山旅を重ねていきたいと思います。 

 

 

十勝岳には夏を中心に何度か登っています。

 

興味がありましたら、そちらの記事もお読みください。