こんにちは!やまたび北海道のコモ子です。
6月17日に6度目の十勝岳を深夜に訪れてみましたので、その様子をもとに記事を書いていきます。
十勝岳は残雪期のスキーシーズンからはじまって、夏山シーズンももちろん人気があります。秋はちょっと落ち着くものの、それでも雪が積もる12月頃まで1年を通じて大変人気がある山ですよね。
そんな十勝岳の楽しみ方の一つに、ナイトハイクがあります。地形が単純で登山に要する時間も比較的短いため簡単そうに思えますが、もちろんリスクもいくつかあります。
この記事では、私の経験をもとにいくつか注意点を書いていこうと思います。
夜間に登ることを検討されている方、許容できるリスク、許容できないリスクについて十分危険見積もりを行って、安全な登山を楽しみましょう。どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
深夜に出発するなら周囲にちょっと配慮して
登山口となる望岳台には広い駐車場があり、数年前にはトイレや案内所など新しい建物が整備されました。
本州の山々ではそれほど珍しくないのでしょうが、北海道で登山口にこれほどの施設があるのは極めて稀な例で、夜間は無人になるものの、自販機もトイレも24時間使用することができるので大変便利です。
ただし、内部で宿泊はできません。多くの人が使う公共の施設なのでマナーを守りたいところ。その快適性から、最近は登山者ではない方でも車中泊のポイントとして利用しているようですが、やはり多くの方は早朝から山頂を目指すために前夜泊をしているので、かなり早い時間から静まり返っています。
車のドアを開け閉めする音、熊よけの鈴の音、ヘッドランプの光なども眠っている人にはかなり気になるもの。深夜に出発する場合は、車両の駐車位置も含めて十分に配慮したいものです。
登山前にトイレを済ませて、ここの入り口にある届出用紙に記入もしましょう。
ガスがかかっているときは十分注意をして
十勝岳でもっとも考慮しないとならない要素の一つに、ガスがあります。国土交通省が提供する「火山リアルタイム情報」では、望岳台(標高930m)と避難小屋(標高1,330m)にライブカメラが設置されており、リアルタイムで状況を確認することができます。
これを頻繁にチェックしていると、両方もしくはどちらかがガスの中で、真っ白で何も見えないということが結構多くあります。
このような状況で天気予報が晴れマークの場合は、山頂が晴れている可能性が高いので、山頂からのご来光を眺めるのにかなり期待ができます。
ただし登っている最中には星空が見えませんし、ガスのなかではヘッドライトの明かり乱反射して地形を見失いがちです。
また、昼夜の寒暖差が激しく、雲がすでに望岳台付近かそれ以下まで下がっている場合は、山頂まで最高のナイトハイクが楽しめることでしょう。ただしこの場合、下山時にガスの中を通過する可能性も考えられます。
いずれにせよ、周囲に樹木がなくガレ場の道で明瞭ではないため、ガスの中を歩く場合は見失わないように十分な注意が必要です。地形が単純で、たとえ何度も登った経験があったとしても油断は禁物です。
風向きによっては噴煙も視界の妨げに
現在の登山コースは、前十勝付近からの火山性有毒ガスの影響を直接受けないようなコース設定になっています。
ただ、風向きによっては上空を覆うことがあるため、昭和火口から上部の平坦地で上空を覆われることによって、全く影響を受けないとも言い切れません。
山頂まで登ることが出来なくても、この付近から山頂や美瑛岳の眺めが美しいものがあります。ご来光目的で山頂へ登る場合は、星空が見られる時間帯は、ちょうどこの付近を通過する頃がリミットだと思われますので、噴煙の向きによっては影響を受けるかもしれません。
残雪の影響は受けないが…
残雪の影響をほとんど受けることなく山頂まで登ることができるのは、大雪山系の中では十勝岳がもっとも時期が早く、たいてい6月上旬から登ることが可能です。
2018年は6月10日過ぎに降雪も確認されていますが、それでも1日、2日で雪は解けてしまいます。
ところが、ガスがかかる暗い中で行動していると、ルートをミスして雪渓の中に入ってしまうことも十分に考えられます。
例えば、望岳台から避難小屋までの間では、吹上温泉側の1段高い尾根を進むのが正しいのですが、美瑛側の雪渓を誤って進んでしまうこともあり得ます。
また、避難小屋から先の夏道は尾根に上がりますが、下山時によく使用する沢地形に足跡があるために、雪渓を登ってしまうこともあるかもしれません。
いずれの場合も山頂まで至ることはできますが、初めて十勝岳に訪れる方にとっては、見通しが悪い状況でルートを見失うかもしれません。
ちなみに、昭和火口付近から避難小屋まで下山時に使用する雪渓ですが、ナイトハイクの帰りの時間帯はまだ雪が固く締まっていることがありますので、夏道を使って下りたほうが安全です。
強風の影響も十分考慮しよう
十勝岳は登山開始から下山するまで、周囲に風を遮るものがまったくありません。ですから、風が強い日にわざわざ登る人は少ないと思いますが、途中から風が強く吹いてくることだって十分に考えられます。
天気が下り坂でもない限り、深夜に風が強まってくるということは少ないと思いますが、明け方になって陽が昇り、下山時に風が強まるということはよくあります。
登山事故の7割は下山時に発生しているということからもわかる通り、最後まで油断はできません。山頂で長居をして体温が冷えている中で、朝の冷たい風に当たれば体力の消耗も激しくなります。そういったいつもの登山とは違う条件を考慮して、風に対する対策も必要です。
ナイトハイクの防寒対策は1シーズン分余裕をもって
タイトルにある1シーズン分の余裕とは、春や秋なら冬の装備を、夏なら春の装備を持って行きましょう、という意味。
ナイトハイクは夜間や早朝といった気温の低い時間帯に行動するので、行動中の防寒対策が必要だと考えがちです。
しかし本当の理由は、写真撮影や山頂でご来光を待つ時間など、行動が停滞して動かない時間が多いことのほうが問題なのです。
寒い季節、腰から下の寒さは比較的長い時間我慢できるものですが、上半身や手指、耳などの末端が冷えると辛いものがあります。そこで、持参した方がいいものとして、
- フード付きで風を防ぐことができるジャケット。雨具で代用する場合はダウンのウェアなどを中に着用できるもの
- つばのあるキャップではなく、無い耳まで覆えるような帽子
- 目出し帽
- スキー手袋など冬用のもの
- 首捲き
- 使い捨てカイロ
これらがあると快適に過ごせます。ちなみに暖かい飲み物も嬉しいですが、ご来光を待っている時、周囲に人がいる中でトイレが我慢できなくなると辛いので、考えものです。
その他、避難小屋や虫の話
十勝岳には標高1,330m付近に避難小屋がありますが、これは万一噴火があった時に一時的に利用するためのもので、ひと休みする程度の設備しか備わっていません。
富士山のように途中に多くの営業小屋があるわけではないので、緊急時に駆け込めるような設備はないので、ナイトハイクをする場合は相応の経験と知識が必要になります。
とは言え十勝岳のナイトハイクは、山頂からの眺めや、登山口へのアクセス、行程の長さなどのどれをとってもバランスがいいので、しっかりとした準備と計画で臨めば、幸福度がきわめて高いハイキングが楽しめます。
最後に虫について。
ヘッドライトを使用して、夜間行動するときに頭を悩ませるのは、虫が寄ってくることです。十勝岳は植生が比較的少ないものの、それでも蛾などが寄ってきますので、その辺も考慮して快適なナイトハイクを楽しんでくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※この記事は2018年6月17日の山行をもとに作成しました。